発展途上臨床さいころじすとの航跡blog版 SSTの技法と理論-さらなる展開を求めて(精神分析 臨床心理 心理療法)
上記の広告は1ヶ月以上更新のないブログに表示されています。
新しい記事を書く事で広告が消せます。


SSTとは「Social Skills Training」の略で、日本語では生活技能訓練・社会技能訓練と訳されることが多い。行動療法のモデリングや行動リハーサルといった技法を使い、対人関係やコミュニケーションの練習をしていくものである。これは集団ですることが多いが、個別に施行することもできる。

本書はSSTのマニュアル本などではなく、これまでの歴史を概観し、現在のSSTの治療的な位置づけについて包括的に論じているものである。

しかし、本書の編著者である西園氏はIPA(国際精神分析学会)に認定されている精神分析家であり、一見SSTとは関係がないようにも思える。なぜその西園氏がSST普及協会の会長をし、本書の編著をしているのかについては、第1~2章でその内実が書かれている。簡単に述べると、アメリカ精神分析アカデミーでSSTの創始者であるリバーマンが受賞されるということがあり、それをきっかけに西園氏はSSTについて知ったようである。その後、IPAの大会に出席する折にリバーマンに会い、大学の研究室でSSTを導入することになったようである。西園氏は精神分析家ではあるが、精神医療の現場で長年働いており、包括的に精神障害者の治療に当たっている経緯からSSTにも興味を示されたのかもしれない。

本書では、SSTの歴史から技法の解説、基礎理論、各分野での応用、さらにはエビデンスについてまで網羅されている。すべてに触れることはできないが、いくつか印象に残ったところいうと第8章では更生保護分野でのSSTの導入について前田氏が詳細に説明している。その中でSSTを導入する際に、手弁当で、ボランティアで、休日返上で、無給で行ったとしており、それを奉仕精神によるものとして美化しているところがあった。そのような熱意には感心するし、そういう金銭が支払われない財源的な事情もあったのかもしれない。ただ、援助専門職ということであれば、奉仕精神で技術を安売りするのではなく、誇りをもって専門技術の提供の見返りとしての正当な報酬をもらうことが大事なのではないかとも思う。特にサービスや福祉は奉仕精神の名の下で援助者の善意を搾取し、疲弊しつづけてるリスクが非常に高くなる。ボランティア精神・奉仕精神に依存した援助ではなく、効果が裏付けられた根拠ある援助を行うことが必要である。今でも福祉現場では低賃金でこき使われることが多いと聞く。もちろん、そうではない現場もあるだろうし、専門意識が高い援助者もいるだろうが。

また、第13章ではSSTのエビデンスについても述べられている。これまでのさまざまな研究を通して、SSTの効果はそれなりに認められているが、唯一、般化と維持については一貫して否定的な結果が見出されているようである。つまり、SSTをしている時には良いが、それが現実生活に応用されず、SSTが終われば効果が低下するということである。このあたりの知見は以前から見出されており、色々な工夫が凝らされているようであるが、未だにそれを克服することができていないのが現状のようである。


関連記事
コメント
この記事へのコメント
コメントを投稿する
URL:
Comment:
Pass:
 
トラックバック
この記事のトラックバックURL
http://purely0307.blog79.fc2.com/tb.php/459-8589981e
この記事にトラックバックする(FC2ブログユーザー)
この記事へのトラックバック
上記広告は1ヶ月以上更新のないブログに表示されています。新しい記事を書くことで広告を消せます。