発展途上臨床さいころじすとの航跡blog版 原初の情緒発達(精神分析 臨床心理 心理療法)
上記の広告は1ヶ月以上更新のないブログに表示されています。
新しい記事を書く事で広告が消せます。

D.W.ウィニコット(著) 「原初の情緒発達」 1945年
北山修(監訳)“小児医学から精神分析へ-ウィニコット臨床論文集-” 岩崎学術出版社 pp159-176

 ウィニコットは小児科医としてのキャリアが始まり、その後に精神分析を勉強し、精神分析家の資格を取得した。そして精神分析の領域では主に精神病者などの重篤な患者を対象にした分析を行っていた。本論文はそのようなウィニコットの経験から書かれたもので、主に精神病者の心の在り方と、早期乳幼児期の心の在り方の似ている点について述べているのである。

 精神病者の特徴としてまずは「無時間性」を挙げている。フロイトの無意識には時間がない、といった言及を思い起こすことができるが、ウィニコットは症例を提示しながら、曜日や時間の概念がなく、それゆえ成長もない特徴を描いている。そして「乖離」についても挙げており、これは矛盾するいくつかの心性が同時に心に起こることを示している。ブロイヤーの“アンビバレンツ”を彷彿とさせるものである。

 そしてこれらのことが抑うつポジション・思いやりの段階以前の状態であるとしている。その段階以前といってもクラインの妄想分裂ポジションとはまた違うものをウィニコットは見ているようである。クラインの妄想分裂ポジションは攻撃と迫害が織りなす殺伐とした世界を描き出しているが、ウィニコットはクラインのような殺伐とした世界ではなく、解体へと至る無統合な状態を描写しているようである。ここに多少クラインとは異なる理論展開や世界観を持っていることがうかがえる。特に空想を欲求不満の結果によって生み出されたものではなく、“錯覚”の体験から生み出されていることが主張されているところにウィニコットらしさがあるように思う。

 また細かい話であるが、ウィニコットは本論文では良い解釈について触れており、「良い解釈とは愛の表現であり、よい授乳や世話の象徴なのである」としている。クラインやビオンのような理解を現時点ではしているようである。後のウィニコットは解釈を「分析家自身の限界の提示」としていたところに、理論の変遷が見て取れるようである。

 しかし、精神分析を通して精神病者の内的世界に勇気を持って対していくウィニコットのすごさには感服する。そして、その過程で今日まで通用するような理解を創出したことで、精神分析の大きな発展があったものと思われる。現代ではなかなか精神病者の精神分析をする機会はないのが残念である。


関連記事
コメント
この記事へのコメント
コメントを投稿する
URL:
Comment:
Pass:
 
トラックバック
この記事のトラックバックURL
http://purely0307.blog79.fc2.com/tb.php/371-f9efb465
この記事にトラックバックする(FC2ブログユーザー)
この記事へのトラックバック
上記広告は1ヶ月以上更新のないブログに表示されています。新しい記事を書くことで広告を消せます。