発展途上臨床さいころじすとの航跡blog版 心理療法におけるキャンセルとキャンセル料を取ることについて(精神分析 臨床心理 心理療法)

臨床心理士ピュアリーの心理臨床・精神分析に関する日記。

心理療法の中でキャンセルすることや、キャンセル料を支払うことについての考察。


 前の記事の「心理療法における料金について」のところで料金設定について書きましたが、その補足として心理療法におけるキャンセルやキャンセル料を取ることについて、現時点での僕の考えを書きたいと思います。

 心理療法を施行している機関によって、料金が無料・保険・自費というふうに違いがあります。無料のところではキャンセル料などは取ることはできないし、医療機関など保険適用でしているところも取れないかもしれないので、この話は自費で心理療法をしているところに限られるかもしれません。

 キャンセル料を取ることのメリットはキャンセルが減らせるということがまずは挙げれます。心理療法をしていて、無断キャンセルが未だに1度もない!という人はかなり稀な人ではないかと思いますので、この効果は大きいと思います。

 キャンセルの理由は患者さんの色々な力動によるものから、公共機関の遅れや現実的用事まで色んな理由が考えられます。中でも力動によってキャンセルになると、そのことについて話し合えなくなってしまい、そのことによって治療のプロセスが停滞してしまいます。それを防ぐ意味でもキャンセル料を取ることで少し無理矢理かもしれませんが来談してもらい、現在の心境や心のありようについて語ってもらうことができるようになります。

 もう一つのメリットはキャンセルがあった場合、患者さんが不必要な罪悪感を抱かずに済むということがあります。

 このことについては、患者さんのパーソナリティにもよるので一概には言えませんが、心理療法を休んだりすると、「治療者がわざわざ時間を取ってくれているのに休んでしまって申し訳ない」といった気持ちを抱く患者さんがかなりの多いと思います。キャンセルの次の面接で「前回はすいませんでした」という患者さんの言葉を聞いた事がない治療者はいないと思います。

 自己愛の人や反社会的な人ではこういう罪悪感は少ないのかもしれませんが、強迫・うつ・不安・一部の境界例の人の罪悪感は非常に強いもののようです。そして、この罪悪感を体験できない自我機能の低い人は自分のキャンセルで体調や精神状態が悪化したりする場合もあります。

 こういう場合にはキャンセル料を取ることで、不必要な罪悪感の一部を低減できる効果はあると思います。

 しかし、キャンセル料を取ったとしても、罪悪感を抱く人はいるし、キャンセルが全くなくなるというものではないと思います。

 キャンセルになった場合には、やはりその理由について考え、次回に治療者と患者さんが話し合い、キャンセルの理由を明確にしていく作業は必要だと思います。また、キャンセルしたことに対する患者さん自身の反応についての手当も大切です。

 そうはいっても、キャンセルになった場合、往々にして治療者の中で感情が動いたり、色々な連想が沸いたりします。「前回何かミスしたのだろうか?」とか「何か悪いことが起こったのではないか?」とか「あの人はああいう風にズボラだから」などなど。そういう思いを収めていくことはまずは大事ですが、キャンセルに至った理由についてあれこれと考えていくこともまた大事です。

 中には、キャンセルついて、あまり頓着しない治療観をもった流派や治療者もいるので、全部が全部ではないとは思いますが、キャンセルの意味を考えることはこれからの心理療法をより良いものとしていくためには必須のことです。そして、その考えた仮説について次回の心理療法時に話し合うことが今後の治療のプロセスに有効に働かせることができます。

 これは治療者のオリエンテーションによっても違うと思いますが、キャンセルは患者さんが言葉では表現しきれない気持ちや思いが行動化した結果ではないかと思います。治療関係の中での転移や反復といった今までの患者さんの対人関係のありようがキャンセルという一つの行動化を通して表現されているのでしょう。できれば、そういうものを心理療法の中で話し合い、そこにどのような思いを持っているのかについて言語化してもらうことができたら一番よいのかもしれません。治療者の対応ミスによるものであれば治療者が自らのやり方を修正し、患者さん自身の葛藤の表れであれば、それについて内省し、そういう作業が心理療法では大切になってきます。

 といっても、無断キャンセルから連絡が無いまま中断となってしまってはもうどうしようもありませんが。そうはならないように、心理療法の初期の間に、今までの治療歴やその転帰について聞いておくことが大切になってきます。もし以前に無断キャンセル→中断ということがあれば、その時にそうなった理由などを聞いて、「今回もそういう時には中断したくなって連絡無く来ないでおこうとするかもしれませんが、できればその時の気持ちを話し合うことが一つの成長のきっかけになるので、できればキャンセルせずに来てもらえたらと思います」という風に布石を打っておくと良いかもしれません。


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