発展途上臨床さいころじすとの航跡blog版 EBMキーワード(精神分析 臨床心理 心理療法)
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 EBMとは根拠に基づく医療のことであり、以前までは経験と勘に頼っていた医療の欠点を変えていこうという考えの下で発展してきた。すなわち、さまざまな研究や知見を実際の臨床にどのように生かしていくのかを考えるのがEBMである。

 しかし、EBMの誤解として様々あり、例えば「個別の患者を無視している」や「データのみに頼って人間性がない」などの非難がされることもある。しかし、EBMは単に科学的データだけに頼った医療ではないし、ましては人間性がないというのも的外れな非難である。EBMは個別の患者から始まり、個別の患者で終わると言って良いほど、目の前の患者に何が役に立つのかを最優先事項で考えているのである。そこで以下にEBMの5つのステップを転記する。

(1)患者の問題の定式化
(2)問題についての情報収集
(3)情報の批判的吟味
(4)情報の患者への適用
(5)1~4のプロセスの評価



 EBMと聞くとどうしても(2)や(3)の情報(研究結果)などが注目されがちで、それを機械的に患者に適用するイメージで語られることが多いかもしれない。しかし、研究結果だけから判断するのではなく、患者の個別の問題と研究結果を統合して、臨床的な判断を下したり、治療をしたりすることがEBMの理念となっている。また、治療した後、ほったらかしではなく、その後の経過を観察し、治療や診断が妥当であったのかを振り返るということも重要なステップとなっている。それからするとEBMは極めて個別の患者に即した対応をしていると言える。

 そして、参照する(2)や(3)の情報(研究結果)にはどういうものがあるのかというと、以下のエビデンスレベルによって示されている。

(Ⅰa)ランダム化比較試験(RCT)のメタ分析による
(Ⅰb)少なくとも1つのRCTによる
(Ⅱa)少なくとも1つの非RCTによる
(Ⅱb)少なくとも1つの準実験研究による
(Ⅲ) 非実験研究(観察研究)による
(Ⅳ) 専門家による報告や意見、権威者の経験による



 RCTは大変有名で、治療方法の効果を測定するのには有用な研究方法である。しかし、RCTで効果があると検証されることだけで全てがそれで良しということにはならない。RCTと言えども欠点はある。それは外的妥当性の低さによるものである。RCTで対象とした患者に平均的に効果があると結果が出ても、それが実際に目の前にいる患者に適用できるのかはまた別問題なのである。それは選択バイアスをコントロールできないということから来ているとも言える。それでも、情報バイアスや交絡因子をコントロールできるという優れた点があるため、エビデンスレベルでは上位に位置づけられているのである。そして、RCTの欠点を補う形でコホート研究・症例対照研究などがある。これらを総合して多角的に研究していくことが大事なのである。

 そして根拠となる研究の検索や収集方法についても本書では紹介されている。インターネットで検索できるものから購読を必要とするものまで様々である。しかし、それらの情報は膨大で、全てに目を通すことは事実上不可能である。その為、原著などの一次資料ではなく、レビューやガイドラインなどの二次資料を有効に活用し、日々の診療の中で可能な範囲で「楽をする」ことが必要である。

 このようにEBMは単に信頼できる研究結果だけを参照して医療をするというよりは、目の前の患者さんに何が役に立つのかを考え、妥当性の高い方法をその患者に即して使っていくということを目指すものであり、医療全体のレベルを上げていくことにつながる理念のようなものであると理解すると良いだろう。その為の入り口としてこの本は簡潔でよくまとまっており、概要を把握するのには最適な一冊であると思われる。



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