発展途上臨床さいころじすとの航跡blog版 代替医療のトリック(精神分析 臨床心理 心理療法)
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 本書では様々な代替医療に関する研究を包括的にまとめ、それぞれに効果があるのか、それとも効果がないのかを明らかにしていっている。

 第1章では科学的根拠の基づく医療(EBM)ができる前はどのような状況だったのか、そしてどのような経緯でEBMが出来上がってきたのかが概観されている。EBMの考えができ始めたのは1746年にイギリスのリンドが壊血病に対する効果的な治療を実験によって確かめていったことからである。それまでは様々な病気に対して経験と伝統に頼ったものであったが、この実験を皮きりにどんどんと実験を繰り返し、効果のあるものとないものを仕分けて行く作業が始まって行った。その中にはナイチンゲールの例もあった。ナイチンゲールは看護師という職業の基礎を築いた人物として知られ、暖かく包容的で親身に患者の世話をしたというイメージで見られることが多い。しかし、実際のナイチンゲールはそういう側面もあったかもしれないが、それ以上に統計学者・科学者であり、怪我の治療には衛生管理が重要であるとし、それを実験と統計によって確かめて行った。このようなナイチンゲールの仕事によって、今日の看護・衛生管理の大切さが世に広まっていったのである。

 このようにEBMの考え方のもとで、確かな病気の治療方法を探していくことにより、昔では考えられないくらい医療が発達し、その恩恵をたくさんの人が受けれるようになった。そして、以下の章ではこのEBMの考え方のもとで、鍼・ホメオパシー・カイロプラティック・ハーブ療法の4つを中心に、さまざまな代替医療がどのような評価を受けているのかを見て行くこととなる。

 鍼は細い針を皮膚に打ち込むことにより病気を治す技術であり、古代から続く代替医療であり、気や道といった概念を基礎理論を持っている。さまざまな研究から言えることは鍼についてはある種の痛みや吐き気にわずかな効果があるが、通常医療に比べて効果も小さく、効き目も長く続かないようです。すなわち、効果と思われていたもののほとんどがプラセボであるようです。

 ホメオパシーは200年ほど前にできたもので、微量の毒を何万倍にも希釈した水や砂糖を飲むことにより、病気を治療するものである。希釈されたものには1分子も含まれておらず、ホメオパシーが主張するメカニズムは根拠のないものとされている。また効果についても全くはなく、プラセボに過ぎないことが確認されている

 カイロプラティックとは、脊椎の異常により病気になるという理論の元で、脊椎に手技を施すことにより治療するものである。これについては、腰痛にわずかな治療効果が見られるのみで、その他の症状については効果は見られないものである。また、この手技を受けることにより、脳卒中などの重大な危険性が見られることもある。

 ハーブ療法とは、植物から抽出されたエキスで病気を治療するもので、漢方などとも近い関係にあるのかもしれない。これについてもいくつかの効果は確認されたが、通常医療による効果はそれほどなく、ほとんどがプラセボであることが確認されている

 その他に以下の代替医療について、それぞれ簡潔に効果研究のまとめをしている。

アーユルヴェーダ
アレクサンダーテクニック
アロマセラピー
イヤーキャンドル
オステオパシー(整骨療法)
キレーションセラピー
クラニオサクラルセラピー
クリスタルセラピー
結腸洗浄
催眠療法
サプリメント
酸素療法
指圧
神経療法
人智学療法
吸い玉療法
スピリチュアル・ヒーリング
セルラーセラピー
伝統中国医学
ナチュロパシー
パッチフラワーレメディ
ヒル療法
風水
フェルデンクライス法
分子矯正医学
マグネットセラピー
マッサージ療法
瞑想(メディテーション)
リフレクソロジー
リラクセーション
レイキ(霊気)



 いくつか聞いたことがないものもあれば、催眠療法・レイキ・スピリチュアル・瞑想などよく自称カウンセラーがしているものまで入っていた。催眠療法については自律訓練法などは不安やストレスに対する効果は確認されているが、その他のものは効果は確認されていないようである。レイキ・スピリチュアル・瞑想については、まったく効果がなく、ほとんどがプラセボであり、逆に悪化する危険性も指摘されている。さらには、いずれも継続的に手技を受けることをほとんどで勧められるため、多大な経済的不安を強いられ、通常医療を受ける機会を失うため、そういう意味での危険性は高いと指摘されている。

 本書ではいずれの代替医療においても効果はプラセボかどうかというところがとても重要なポイントとなっており、純粋な効果を判定するためにランダム化プラセボ対照試験という実験方法を用いて確かめて行くことが強調されている。代替医療のほとんどはプラセボに頼っていることが本書では明らかになった。しかし、中にはプラセボでも効果があればそれで良いじゃないかという反論もあるが、著者たちはそういう反論は医療に対する不正と切り捨てている。すなわち、プラセボを最大限に与えるためには、効果がないという真実を隠さねばならない。それは今後の医療の発展を妨げ、患者にウソを教えるという不誠実な行為をしなければならなくなる。また、プラセボを出すために代替医療は費用を高額にし、通常医療を過剰に否定している。このような行為が患者のためになろうはずはない。

 そして、何の効果もないものを与えてプラセボだけに効果を期待するなら、実際的に効果のあるものを与えて、プラスしてプラセボも出てこれば、もっと高い効果を期待できるのである。このような点からプラセボだけに頼る医療というのは捨てて行かねばならないと言える。

 代替医療は自らの効果のない方法を広めるために様々な手法を用いる。通常医療に対して根も葉もない噂を流し、あたかも代替医療がすべての病気を治すという宣伝を行う。たとえば、代替医療の好んで使う言葉に、統合的で(ホリスティック)、自然で(ナチュラル)、伝統的で(トラディショナル)、という3つがある。しかし、よくよく考えてみれば分かるが、いずれも中身のない美辞麗句にすぎないことが良く分かる。統合的については、逆に統合的に見ない医療はどこにあるだろう。自然で、というものも、そこまで自然が人間にやさしいかどうかは分からない。自然会は人間に対して様々な毒素を持っているものである。伝統的、というのも長ければ良いというものでもなく、長い間、間違った手技が伝統的に行われていた例はたくさんある。うわべが魅力的でも中身が伴なっていないと言える

 これらのことを良く言えばマーケティング戦略に長けていると言えなくもないが、患者に対する不誠実さを考えたら罪は重いだろう。ちなみに色々な調査結果から予想すると、全世界で代替医療に費やされるお金は日本円にして8兆円を超えるとのことである。そのすべてが無駄とは言わないが、このお金をもっと効果もあり、もっと短時間で済み、もっと安い費用でできる通常医療に切り替えるだけで、他に回せるお金が出てくるだろうと思う。

 そして、代替医療は時として「科学では解明されていない」や「科学では分からないことがある」といった批判をすることもある。そうかと思えば都合の良いときにだけ自らの正当性を主張するために科学を持ち出そうとする。科学では分からないということを合理化の材料にし、それ以上検証をしようとしない怠慢な態度がそこに現れていると言えよう。

 これらのことを見て行くと、代替医療というのは効果のない医療をしていることを指していることが分かる。逆に現在代替医療でもきちんとしたEBMの元で効果が検証されれば通常医療に組み込まれていく。そういう意味でもEBMは単に通常医療とは違うものを排除するものではなく、代替医療が通常医療に対して存在意義を主張することができる強い武器なのである。しかし、代替医療を推進するものは「代替」という言葉を通常医療を補完し、存在価値を見出すものと解釈しているように思う。そうではなく代替医療=効果のない医療という認識を持つことがもっともと分かりやすいのではないかと思う。なので、代替医療という用語を止め、「無効果医療」や「科学的根拠のない医療」と変更するほうが良いように思う。もっと否定的なニュアンスを強めたいのであれば、「インチキ療法」という用語でも良いだろう。

 最後に本書は様々な研究・論文を引用・参考にしながら構成されているが、文献を最後にまとめて載せ、その都度どの部分がどの引用なのかが書かれていなかった。研究論文を読み慣れている人にしてみれば、ちょっと読みにくいのではないのかと思う。



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