発展途上臨床さいころじすとの航跡blog版 ゲームと犯罪と子どもたち(精神分析 臨床心理 心理療法)
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 日本では1980年代に任天堂からファミコンが発売されて以後、急速にテレビゲームが家庭に浸透し、今ではたくさんの機種が発売され、ソフトも様々なジャンルのものが世に出されています。そして中には暴力的・性的な表現が含まれるものもあり、一部のマスコミや有識者に「有害である」と指摘されたりすることもあります。しかし、本当にそうなのか、具体的にどのように有害であるのかといった議論があまりなされずに、本当に有害であると聖書の文言のように流布しているようにも思います。そのような中で包括的にゲームと犯罪の関係を学問的に研究した結果をまとめたのが上記の本です。

 この本はハーバード大学医学部精神科のスタッフを中心として、心理学・社会学・生理学といったさまざまなジャンルの専門家が参加し、米国政府から150万ドル(1億7千万円ほど)の援助の元、約4000人に対してアンケート・インタビューを行った研究をまとめたものです。またタイトルでは子どもと入っているが、実際の調査対象者には思春期や青年期も含まれており、その辺は大人と言っても良いのではないかとも思ったりする。しかし、費用と云い、数と云い、まさに大規模と云うにふさわしいものです。

 本書では多角的に様々な観点からゲームと暴力の関係について調べていますが、暴力的なゲーム・性的なゲームをするから暴力的になったり、性非行に走ったりするような単純な話ではないとしています。その他の要因のほうがゲームの要因以上に問題であることもしばしばです。また、最近ではMMORPG(多人数参加型オンラインゲーム)への依存も問題になっていますが、MMORPGが依存を作り出すのではなく、さまざまなその個人の問題からの一つの症状として依存があるのではないかという指摘もなされています。

 さらに、猟奇的な事件の犯人がアダルトゲームやアダルトビデオを多数所持していたりすると、こぞって「それが犯罪に至らしめた」とオニの首を取ったかのようにセンセーショナルに報道されたりすることもあります。また、最近では、アダルトパソコンゲームである「レイプレイ」の問題が取り沙汰され、これが暴力や性犯罪を誘発するのではないかとヒステリックに叫ばれ、規制がされたり、自主規制に踏み切ったりすることもありました。心情的には、ゲーム→暴力、としたい気持ちは分からないでもないのですが、それは何らかの個人的な価値観に基づいた考えであり、科学的には何ら証明されていないものです。そういう中で規制をしてしまうと、もっと大事なものを見落としてしまうことになってしまいます。僕個人としてはフェミニズムは好きでも嫌いでもないですが、ヒステリックにすべてを規制しようとする原理主義的なフェミニズムはどうかと思います。

 本書でよく出てくるゲームとして「グランド・セフト・オート」というものがあります。日本でもあるのかもしれませんが、アメリカでは中高生には大人気のゲームのようで、プレイヤーを操作して、銃を撃ったり、ドラッグ密売をしたり、SEXがあったり、乱闘をしたりといわゆる暴力・性表現ゲームの典型のようです。これについてのインタビューも多数載せられていますが、このゲームについて根拠のない不安と恐怖を言葉にする親や大人と、意外と冷静に受け止め、空想は空想・現実は現実と割り切る子どもが対照的で面白かったです。意外とこんなものかもしれません。

 色々な事例やインタビュー、事件、研究が本書では載せられていますが、大事なのは1回のセンセーショナルな事件をことさらに取り上げ、相関関係を因果関係に誤解し、根拠なく反対・規制するのではなく、クリティカルシンキングを持って、科学的にそれは本当か?ということを常に問い続ける姿勢が大事であると本書を通して学べたと思います。


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