発展途上臨床さいころじすとの航跡blog版 12章 男の子の性的発達に対する早期の不安状況の影響(精神分析 臨床心理 心理療法)
上記の広告は1ヶ月以上更新のないブログに表示されています。
新しい記事を書く事で広告が消せます。


 前章では女の子の発達であったが、その続きとして男の子の発達を本章では論じている。クラインは、男の子は早期の段階においては女の子と一緒の発達ラインをたどる、としている。すなわち、口唇期における欲求不満が、母親のおっぱいに対してサディスティックな攻撃性を向けるというものである。そして、この欲求不満とサディスティックな攻撃性から、父親に対する愛着へと向け変えられるというのである。この父親に向け変えられた愛着をクラインは女性的段階と言っている。しかし、このようなサディズムに対する報復を母親から受けるのではないかという男の子の不安は強いのである。この不安を乗り越えるために、サディスティックに攻撃してしまった母親を修復し、良い母親対象を獲得できるのかによっているのである。ここでは明確には述べられていないが、後の「償い」の概念に近いものがここで表現されているようでもある。そして、この女性的段階やサディズムを克服していくことが、健全な異性愛を獲得していく鍵となるとクラインは結論している。

 フロイトは発達については性的な欲動の働きが重要と捉えているが、クラインはそれに加えて、サディズム・攻撃性・破壊性が重要としているところにクラインらしさがあらわれているように思う。この発達を性から攻撃に視点を移すことにより、フロイトの時期には混乱していた、男の子の発達と女の子の発達の矛盾やそぐわなさが多少なりとも薄まっているようにも感じるところである。

 そして、本章の後半では、二つの症例を通して男の子の発達について考察をしている。一つ目の症例は強迫や妄想をもった同性愛の男性、二つ目の症例は抑うつを呈するこれもまた同性愛の男性である。ここでクラインは症例を通して、サディズムの発達や性的発達について色々と論じている。しかし、クラインの書き方の特徴なのか、実際に症例がどのような連想をしたのか、クラインがどのような解釈を行ったのかが、全く記述されておらず、クラインの考察した結果のみが書かれている。このことから、どのような転移があり、そこにどのように空想が現れ、どのように展開したのかが見えないので、あまり理解できないように感じてしまうのは否定できない。

 さらに、本書は「児童の精神分析」ということで、メインは子どもや児童なのだが、ここでは成人の症例を提示しているので、一瞬不可思議にも感じた。しかし、成人の中に子どもを見ていくのが精神分析であるし、今ある症状は幼少期の何らかの固着との関係があるから、成人を見ようが、子どもを見ようが、それはどちらにしても同じなのかもしれない。これは精神分析の独自性にもつながるが、基本的には精神分析では正常と異常という考え方をしないし、そういう分け方をしない。色んな精神疾患や精神障害、精神症状があるが、それはすべて幼少期の各段階において体験するものなのである。例えば、妄想や幻覚といった症状は、生まれてから3ヶ月ぐらいまでの間に体験するものなのである。抑うつにしても、3ヶ月~半年の間に子どもは体験しているのである。そして、成人になってからのそういった症状は、過去に体験した、もしくは固着している心的なありように退行し、そこでやり残したワークをもう一度体験しようとしているだけのことなのである。だから、正常という考え方自体が精神分析にはなく、しいていうと皆が異常なのである。

 時折、精神分析に対する批判で、異常な心理を分析して、それを正常な心理に当てはめている、といったものがある。それは異常と正常という分類をし、その間には全く関連性がないとしている人からすると、そう見えてしまうのかもしれない。しかし、異常も正常も価値観一つで変わってくるものであるし、その見方がどれほど妥当性のあるものなのかは疑問である。

<目次>

第1部 児童分析の技法

 第1章 児童分析の心理学的基礎
 第2章 早期分析の技法
 第3章 6歳の少女における強迫神経症
 第4章 潜伏期における分析の技法
 第5章 思春期における分析の技法
 第6章 子どもの神経症
 第7章 子どもの性的活動

第2部 早期不安状況と子どもの発達に対するその影響

 第8章 エディプス葛藤と超自我形成の早期の段階
 第9章 強迫神経症と超自我の早期段階との関係
 第10章 自我の発達における早期不安状況の意義
 第11章 女の子の性的活動に対する早期の不安状況の影響
 第12章 男の子の性的活動に対する早期の不安状況の影響

 補遺 児童分析の範囲と限界




関連記事
コメント
この記事へのコメント
コメントを投稿する
URL:
Comment:
Pass:
 
トラックバック
この記事のトラックバックURL
http://purely0307.blog79.fc2.com/tb.php/275-ef46523d
この記事にトラックバックする(FC2ブログユーザー)
この記事へのトラックバック
上記広告は1ヶ月以上更新のないブログに表示されています。新しい記事を書くことで広告を消せます。