発展途上臨床さいころじすとの航跡blog版 7章 子どもの性的活動(精神分析 臨床心理 心理療法)
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 精神分析に対する誤解はたくさんあるが、その筆頭に来るのがこの性に関することだろう。特に小児性欲について誤解をしていることが多く、人によっては「子どもと性を結びつけるなんて持っての他!」と嫌悪感をあらわにすることもあるかもしれない。特に20世紀初頭はそういうことが多かったようである。しかし、精神分析で述べる性というのは、成人の性器的なリアルな性交だけを指しているのではなく、もっと広い意味で、人とのつながりや人に対する関心、愛着といったものまで含めているのである。

 また、子どもの相談を受けていると、親御さんから子どもの性的な活動について話を聞く事はよくある。「この子はよく”チンチン!”って叫ぶんですよ(笑)」といった笑い話から、性器いじりなどの習慣的なマスターベーションの問題に困ってる話からさまざまである。さらには、小学生のスカートめくりなどのいじめ・いたづらもこれらに含めても良いだろう。もっと深刻な問題になると、子どもに対する性的虐待などもある。これらのことを考えても、子どもと性とは密着な関係があり、時と場合によっては重大な問題になることもしばしばである。

 この7章でクラインが提示している症例も大きな問題を抱えているように思われる。第1の症例は6歳と5歳の兄弟間の性的行為である。相互的なフェラチオやサディスティックな性的攻撃などが行われているようである。そこには不安と罪悪感、性的願望が蠢いており、発達早期の問題が取り扱われている。またクラインはそこに精神病水準の病理についても示唆している。第2の症例は14歳の兄と12歳の妹の近親姦の問題である。兄は罪悪感を持ち、妹は持ってなかったようである。両親からの禁止された幻想が、二人がお互いにその受け皿になっており、近親姦に至ったというような結論をクラインは記述している。この2つの兄弟姉妹の症例はかなり問題が大きく、一般の事例よりも逸脱はしているが、その分だけ、子どもの性にまつわる幻想などがよりリアルにプレイの中で展開しており、大変分かりやすいと言うこともできる。

 性というのは、ある部分では欲望満足・欲求充足である。そして、常にそれを満たそうとする。しかし、満たされたらそれで話は終わりなのかというと、そうではなく、満たしたら満たした分だけ罪悪感もまた募る。罪悪感は超自我的な禁止が働いているのである。ここに満たしたい思いと満たしたくない思いといういわば相反的な願望がアンビバレントとなり、心の中で折り合いがつかなくなってしまう。このようなアンビバレントは性にまつわることだけではなく、もっと抽象的で高次元の願望でも同様に表れるだろう。

 しかし、性的活動という話からはずれるかもしれないが、この2つの症例、4人の子どもはそれぞれ兄弟姉妹である。その両方ともクラインが分析をしていたようである。家族をそれぞれ同じ分析家が対応することは大変な困難が伴うことだろうと思う。僕も経験があるが、家族力動に挟まれ、誰が誰の味方をするか、自分の陣営に引き入れるか、誰と結託しているか、誰が敵なのかが錯綜してしまう。転移がばらけるとも言えるし、現実的な影響が強く、純粋に転移を扱うことが難しくなってしまう。このような問題をクラインはどのようにさばいていったのかがとても気になるところである。しかし、この時代の精神分析というのは、こういう構造での分析は結構あったのかもしれない。フロイトは自分の娘であるアンナ=フロイトを分析していたし、ジョーンズは自分の娘をクラインに分析させていた。クラインはウィニコットに自分の娘を分析させ、そのスーパーヴィジョンを行っていた。被分析者と結婚した人もいたようである。このように、現実的な関係が深く分析状況に影響を与えている中で精神分析が行われていることが多かったようなので、兄弟を一人の分析家が精神分析をそれぞれにするということは全然普通のことだったのかもしれない。現代では、家族や知り合いを分析することはしないし、兄弟や家族がそれぞれ来たとしても、もし可能なら別々の分析家が分析することが一般的だろう。家族療法などでは違うと思うが。

<目次>

第1部 児童分析の技法

 第1章 児童分析の心理学的基礎
 第2章 早期分析の技法
 第3章 6歳の少女における強迫神経症
 第4章 潜伏期における分析の技法
 第5章 思春期における分析の技法
 第6章 子どもの神経症
 第7章 子どもの性的活動

第2部 早期不安状況と子どもの発達に対するその影響

 第8章 エディプス葛藤と超自我形成の早期の段階
 第9章 強迫神経症と超自我の早期段階との関係
 第10章 自我の発達における早期不安状況の意義
 第11章 女の子の性的活動に対する早期の不安状況の影響
 第12章 男の子の性的活動に対する早期の不安状況の影響

 補遺 児童分析の範囲と限界




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