発展途上臨床さいころじすとの航跡blog版 6章 子どもの神経症(精神分析 臨床心理 心理療法)
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 この章では、クラインによる治療の指標について論じられている。何を問題とし、何を問題としないのか、そもそも問題とは何なのか、ということは大変難しく、また微妙なことである。例えば、反抗期の子どもが親に対して暴言を吐いたり、家に寄り付かなくなることは親にとっては一大問題であるが、発達の過程から見れば、それは自立への表れであり、無くてはならないことである。反対に、全く親に従順で大人しく静かな子どもがいたとして、それは親にとっては大変育てやすく、何の問題にも思えないだろう。しかし、他者に依存的で、自分の主張が出来ず、様々な鬱憤やストレスを内に溜めている恐れもあり、それが健康であるといえるかは分からない。

 クラインは子どもの問題の一つの指標として、知識への抑止、活動の抑止、遊びへの抑止を挙げている。子どもは自由に遊び、自己を表現し、色々なものを取り入れていくことが大事であるが、それが何らかの理由から阻害されていることをクラインは重要な問題と見ている。特に性的なものに対する抑止を重視しているようで、それはクラインが初期の論文から主張し続けていることである。精神分析の一つの目標に、自由連想ができるようになること、というのがある。これは何かと言うと、精神分析的セッティングでは自由連想をすることを被分析者は課せられるのだが、実際に自由連想をすぐにできるケースというのはほとんどない。というよりも、自由連想が出来るというのは不可能なことであり、いわゆる努力目標とするのが妥当なのである。自由連想ができないのは、そこに抵抗や転移があり、それを解釈によって解消していくことが精神分析であるとフロイトはしている。後のクライン派や対象関係論では多少異なってくるが、基本スタイルはそうである。クラインは遊びと自由連想を同等のものとしているのであるが、このことから考えても、子どもに遊びの抑止があることそのものが問題としているのは分かるような気がする。クラインは自由連想と同様に、遊びが抑止されるのはそこに抵抗や転移があるので、そこを解釈していくが重要としている。また、クラインは特に性的な問題を取り扱っていくことに重点をおいているようである。

 またクラインは、すべての人は神経症と精神病を通過している、と大胆なことを言っている。発達のある過程と、顕在化している精神障害との類似は今日では一般的に知られていることであるが、クラインはこの時点ですでにそれを指摘しているのかもしれない。後期クライン理論では、妄想分裂ポジションは生後すぐから2~3ヶ月の乳児に体験されていることであり、抑うつポジションは半年ぐらいまでの幼児には体験されていることである。その心性は心を作る部分として成人になってからも存在しており、それが何らかの要因により、退行して、乳幼児の心性が表に出てくるのである。それがいわゆる精神障害として理解されるのである。現在の生物学的精神医学とは真っ向反対のことかもしれないし、これが本当はどうかは分からないが、そのような観点からセラピーや分析を行うと大変よく理解できるのである。そう言えば、日本の分析家である小倉清先生はいつかのセミナーで「すべての子どもにきちんとした精神分析を行えば統合失調症はこの世からなくなる」といったことを言っていた。ものすごく過激な発言であり、100%賛同できるものではないが、ある部分では理解できる話である。

 そして、治癒をどこに置くのかについても言及している。フロイトは「働くことと愛すること」という命題を残しており、クラインもそれを引用しつつ、子どもではその基準は難しいと考えているようである。いくつか治癒の基準を挙げているが、遊びの抑止の減少、遊びへの関心が深くなり安定する、遊びへの関心が広がる、としている。さらには、成人の神経症の予防効果としての精神分析の価値をも指摘している。しかし、精神分析をする上でのお金と時間と労力といったコストはかなり膨大になってくる。そのようなものをかけてまで予防のために精神分析を行うのは現在的な価値基準では無理がありそうにも思うが。

 最後にクラインは簡単ではあるが、重要な指摘を行っている。それは遊びはマスターベーション幻想の表現の手段であるというものである。このマスターベーション幻想というのが具体的にどういうものを指しているのかは本書で示されている事例を読むと分かるが、子どものさまざまな性的な関心や嗜好性が親などに対して向けられ、さらに自分の性的満足のために奉仕されることだろうと思う。さらに本書ではあまり述べられてないが、精神分析の中における転移の重要性から鑑みると、このような幻想が遊戯療法の中で、クラインという分析家に対して向けられていたのだろうと想像できる。

<目次>

第1部 児童分析の技法

 第1章 児童分析の心理学的基礎
 第2章 早期分析の技法
 第3章 6歳の少女における強迫神経症
 第4章 潜伏期における分析の技法
 第5章 思春期における分析の技法
 第6章 子どもの神経症
 第7章 子どもの性的活動

第2部 早期不安状況と子どもの発達に対するその影響

 第8章 エディプス葛藤と超自我形成の早期の段階
 第9章 強迫神経症と超自我の早期段階との関係
 第10章 自我の発達における早期不安状況の意義
 第11章 女の子の性的活動に対する早期の不安状況の影響
 第12章 男の子の性的活動に対する早期の不安状況の影響

 補遺 児童分析の範囲と限界




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