発展途上臨床さいころじすとの航跡blog版 3章 6歳の少女における強迫神経症(精神分析 臨床心理 心理療法)
上記の広告は1ヶ月以上更新のないブログに表示されています。
新しい記事を書く事で広告が消せます。


 1章2章では児童分析についての理論や技法を総括的にまとめられていたが、この3章では臨床素材を用いて、実際の児童分析はどのようなものであるのかを詳細で説明されている。

 ここでの症例は強迫神経症に罹患している6歳の少女エルナである。不眠、抑うつ、過剰な指しゃぶり、多動、人前でのマスターベーションといった症状や問題行動があり、クラインの精神分析を受け始めたようである。来談経緯や来談経路については記載されていなかった。分析ではサド-マゾ的な空想や、両親の性交を思わせる遊びが展開していったようで、その中でエルナの迫害的な不安や制止といった病理がクラインの解釈によって扱われ、症状や問題行動が軽減していったとのことである。しかし、分析は2年半後の575セッションで「外的な理由」によって中断となっている。

 外的な理由による中断というのは確かに臨床をしているとしばしば起こるものである。引越しや進学、結婚、経済的理由、等々が外的理由として挙げられると思う。しかし、確かにそういう事情もあるだろうが、ある部分ではそうした外的な理由をもってくるという行動化でもあると理解することができる。簡単にいうと「治療を辞めたい」と直接言うのは憚られるので、「お金がなくなったから」とか「遠くに行くことになったから」ということにしておいて、治療者との対決を回避しているということである。そこには様々な転移が動いており、その転移を治療者が扱いきれてなかったために、患者は中断ということを通して治療者に何かを伝えようとしているのかもしれない。このような理解がクラインの時代にあったのかなかったのかは分からないが、中断にまつわることを本書では全く記載されていなかったので、不明なままである。

 また、クラインの精神分析は「フロイト以上にフロイト的である」ということを言われている。それはフロイトが中立性・禁欲原則ということを主張しているのにも関わらず、それを破っているのだが、クラインはその中立性・禁欲原則といったことをきちんと守っているというところにその由来があると思われる。しかし、クラインとフロイトとのもっとも顕著な違いは、母親の問題を取り扱っているか否かであると思われる。フロイトは周知の通り、父親との葛藤を軸においた理論展開を行っており、母親の登場はほとんど見られない。それは終生変わらなかった。そこにはフロイトの生育歴・家族歴といったものが関係しているのであろうが。

 反面、クラインはフロイト以上にフロイト的であったが、理論の中では母親との関係について大変重視しており、このエルナの症例についても母親との関係に言及する解釈を多く行っているようであった。多分、エルナの固着点は前エディプス期であり、そこでの母親への愛着や憎悪といったことがテーマとなっているからであろうと思われる。それは強迫神経症ではあるが、フロイトが強迫のメカニズムとして想定している反動形成を中心とした高次の病理ではなく、迫害不安や妄想的特徴といった精神病的な傾向がエルナには強く見られたところも関係しているのかもしれない。

 強迫神経症は現代でも良く見られる疾患・障害であるが、人によってはその強迫観念などが現実検討を失い、妄想的なレベルに発展し、精神病的な世界を垣間見せるケースがしばしばある。同じ神経症でもパニック障害や不安神経症とはどこか一線を画する印象がある。そう思うと、精神病的なものを強迫で防衛しているということなのかもしれない。クラインはエルナの症例について「重症である」と言っているが、エルナのプレイの様子を見ていると、確かに僕もそう感じるところはあった。

 フロイトは神経科医出身であるということも関係しているが、あまり重症の患者は見ていなかったようである。シュレーバー症例は精神病であるが、直接治療した症例ではなく自叙伝を分析したにすぎない。ウルフマン症例は境界域の重症ではあるが、多分フロイトの中で一番重たいぐらいであろう。後年はスーパーヴィジョンや教育分析・訓練分析を中心とした臨床を行っているので、やはり比較的健康度の高いケースしか持ってなかったであろうと推測できる。しかし、クラインは重症の児童の精神分析から始まり、この後は精神病といった重症例を見ていくことなり、フロイトよりもかなり重たい症例を扱っていたところにフロイトの精神分析を超えたクラインの精神分析が発展していったのであろうと思われる。

<目次>

第1部 児童分析の技法

 第1章 児童分析の心理学的基礎
 第2章 早期分析の技法
 第3章 6歳の少女における強迫神経症
 第4章 潜伏期における分析の技法
 第5章 思春期における分析の技法
 第6章 子どもの神経症
 第7章 子どもの性的活動

第2部 早期不安状況と子どもの発達に対するその影響

 第8章 エディプス葛藤と超自我形成の早期の段階
 第9章 強迫神経症と超自我の早期段階との関係
 第10章 自我の発達における早期不安状況の意義
 第11章 女の子の性的活動に対する早期の不安状況の影響
 第12章 男の子の性的活動に対する早期の不安状況の影響

 補遺 児童分析の範囲と限界




関連記事
コメント
この記事へのコメント
コメントを投稿する
URL:
Comment:
Pass:
 
トラックバック
この記事のトラックバックURL
http://purely0307.blog79.fc2.com/tb.php/265-9ce3f85f
この記事にトラックバックする(FC2ブログユーザー)
この記事へのトラックバック
上記広告は1ヶ月以上更新のないブログに表示されています。新しい記事を書くことで広告を消せます。