発展途上臨床さいころじすとの航跡blog版 臨床心理士をめざす大学院生のための精神科実習ガイド(精神分析 臨床心理 心理療法)
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 臨床心理士・心理臨床家・カウンセラー、呼び名はなんでも良いが、心理臨床やカウンセリングの仕事をする上で、精神科で働くことや実習をすることは必須と言われており、僕も同意見である。本書でも書かれているとおり、精神科で働くことはなくても、精神科に通院・入院する患者さんと接し、そこで体験的に学ぶことによって、精神症状のある人や精神障害の人への対処ができるようになるのである。単にカウンセリングの知識と技術があるだけではカウンセリングはできないのである。

 これらのことから、現在の臨床心理士を養成する大学院教育では精神科の実習はほとんどのところで行われているようである。しかし、実習の方法ややり方については指針・ガイドライン・マニュアルなどはなく、個々の病院・クリニック・大学がそれぞれ手探りで行っているのが現状である。そのような現状から、統一的なガイドを作るまでにはならないが、これまでの経験をまとめていこうとする意図から本書はできたようである。その為、一貫性を持って本書は構成されているとは言えず、羅列的にさまざまな著者が言いたい事を言っているという感じに仕上がっている。

 ただ、これらのことから出来が悪いということでは決してなく、まだ日本全国での共通認識がなされていない現状をそのまま再現しているということができる。そして、それらの雑多な現状から大切なものを抽出し、整理していく作業が今後必要になってくるのだろうと思う。いうなれば、本書はパイロットケースとも捉えることができる。

 内容はというと、臨床心理士をめざす大学院生が実習に行くにあたって、気をつけるべき点、準備するべき点がいくつも挙げられているので、大変参考になると思う。さらには、実習生だけではなく、受け入れる病院・クリニックの担当者や、送り出す大学院担当者にも参考になることが多いと思う。僕自身、今は受け入れる先のクリニックの臨床心理士でもあり、送り出す側の大学の教員でもあり、二重の意味で参考になったと思う。

 そういえば、実習生という立場で僕は精神科に行ったことは実はなく、卒業後すぐに精神科に勤めたのが、精神科との出会いだったことを思い出す。まだ臨床心理士養成が過渡期だったので不十分なカリキュラムの中でトレーニングを受けたが、今のような実習があらかじめ準備されている現状は多少うらやましさも感じてしまう。しかし、不十分だからこそ、自分で各機関に問い合わせて、個別的に実習させてもらっており、そういうところから厚顔無恥ではあるが、度胸はついたようには思っているが。あらかじめ準備されているだけに受身的になってしまうのは弊害と言えばそうかもしれない。

 また、臨床心理士の場合、社会人経験者を除いては、大学院を出るとすぐに仕事をし始め、多くの場合には新人研修・初任者研修を受けることがない。ほとんどの企業・会社では新人研修を行っており、そこで挨拶や電話の受け答えの仕方、名刺の渡し方など、ビジネスマナーを叩き込まれる。臨床心理士は大学院を出てすぐに働くことが多いので、そういうマナーを身につける機会が少なく、悪気はなくても、大変失礼なこと・礼儀知らずなことをしていると思う。かくいう僕も全くそういうことを知らずにきてしまった部類の人間である。そのようなマナーについても、本書は体系的にではないものの、いくつか取り上げており、実務的にこの辺は重要だと思われる。大学院生実習生のマナーが出来ていないこと以上に、実際に働いている臨床心理士のマナーについても考える必要があるかもしれない。

 そして、本書ではリエゾンやチーム医療に触れられているところも多かった。病院というのは他職種がたくさんおり、それらの専門家とどのように連携をとっていくのかが大変重要である。本書のどこかで、仕事に費やすエネルギーは患者3割、他職種7割と言っているところもあるほどであった。他職種に7割のエネルギーを注ぐことで、ひいてはそれが患者に還ってくるということのようである。実習生といっても病院に入るとスタッフの一員であることが強調されており、その心構えをしっかりとすることが求められる。僕も病院で働いていることが多いが、面接室にこもってしまう古いタイプの治療者のようで、このあたりのリエゾンやチームということがうまくできないところがあるので、気をつけていきたいところである。


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