発展途上臨床さいころじすとの航跡blog版 メラニー・クライン著作集1巻(精神分析 臨床心理 心理療法)
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 クラインの初期の著作を集めた本。クラインは抑うつポジションや妄想分裂ポジション、投影同一化などの理論を整備し、対象関係論の元となるものを創ったのだが、この時期ではその片鱗は見せるものの、理論構成が曖昧だったり、飛躍があったりと荒削りの印象を受ける。しかし、荒削りだからこそ、ものすごいエネルギーを感じるし、クラインの地の部分が見えているようにも思う。

 この本では14の論文が収められており、一つ一つを細かく見ていくことも可能だが、ここでは全体を概観した印象を書くこととする。ちなみにnocteさんのブログ「心の探求、あるいは夜の世界」で週刊クラインvol.1週刊クラインvol.2週刊クラインvol.3としっかりとした書評が書かれているので、参照してみると良いだろう。

 まず第1章の「子どもの心的発達」では精神分析的な養育をした事例を元に書かれている。ここでは知性の制止がどうして起こるのかといったことを検討しているのだが、その理論構成はフロイト理論をきっちりと踏まえており、フロイトや精神分析に強い期待と憧れを抱いている様子がよく分かる。しかし、第4章あたりから、エディプスコンプレックスより前の時期について言及するようになり、第6章「早期分析の心理学的原則」では超自我はフロイトが考えるよりももっと以前から存在しており、それはとても過酷で残虐で悪魔的なものであるというニュアンスで書かれている。さらに第7章「児童分析に関するシンポジウム」ではアンナ・フロイトの児童分析についての批判を攻撃的に展開しており、クラインらしいな~という印象を受ける。その後、攻撃性やサディスティックな心性についても扱っており、クライン学派のクライン学派らしさが徐々に見え始めてくるのである。

 この攻撃性をどのように理解し、扱うのかによって精神分析の学派が異なってくるので、とても重要なところであり、未だに攻撃性をどう位置づけるのかの統一見解があるわけではない。クラインの言っていることが実際どうなのかは僕には分からないが、クライン自身のパーソナリティがこの理論に強く影響を与えていることは否定できないと思う。患者はプレイであれ、自由連想であれ、ファンタジーを転移の上で展開させる。そして、その転移は逆転移とセットのものであり、治療者からの影響もまた同時に受ける。なので、転移やファンタジーは患者だけのものではなく、治療者と患者の協同作品なのだろうと思う。クラインの臨床観察では患者が原始的な攻撃性を展開させるプレイを多数行ったのを分析して、攻撃性の理論を作り上げたのかもしれないが、それはどこかクラインの攻撃性の投影を受けたものだったとも考えられる。

 また、クラインの理論(投影同一化や早期幼児期論)から対象関係論という視点が生まれたのだと思うが、少なくともこの時期の論文にはそういう兆候はあまり見られなかった。もちろん、乳児が親からの取り入れや攻撃との関連の中で発達していくという視点は対象関係論的であるが、クラインの治療の中では中立性を堅く維持し、一者心理学的に患者をまさしく分析していくその臨床スタイルは対象関係論の欠片もなかった。転移という関係性にまつわる用語も使っているが、やはりそれは患者は持ち出してくるものであり、治療者の逆転移という発想は見られなかった。この辺り、後期の論文ではどうなってくるのか楽しみなところである。

 それと、訳者あとがきでクラインの半生も書かれていた。僕はクラインの生き様を見る度に、いつも涙が出そうになってしまう。あれほどの喪失体験を繰り返し、大変傷ついてきたことだろうと想像する。クラインが重いうつであったことも分かるような気がする。そういう時に精神分析に救いを求めたのであろう。さらに、この喪失といった抑うつ不安を抱えることの大変さはもしかしたらクラインが一番分かっていたのかもしれない。他者からの批判に対してクラインは迫害されたという体験をし、過剰にやり返すということもしていたようである。まさに抑うつ不安に耐えれず、妄想分裂ポジションに退行していたとも言えるのかも知れない。クラインの償いの作業・喪の作業が精神分析理論・クライン理論の構築に貢献したと言えるのかも知れない。


<目次>
 1 子どもの心的発達(1921)
 2 思春期における制止と心理的問題(1922)
 3 子どものリビドー発達における学校の役割(1923)
 4 早期分析(1923)
 5 チック心因論に関する寄与(1925)
 6 早期分析の心理学的原則(1926)
 7 児童分析に関するシンポジウム(1927)
 8 正常な子どもにおける犯罪傾向(1927)
 9 エディプス葛藤の早期段階(1928)
 10 子どもの遊びにおける人格化(1929)
 11 芸術作品および創造的衝動に表われた幼児期不安状況(1929)
 12 自我の発達における象徴形成の重要性(1930)
 13 精神病の精神療法(1930)
 14 知性の制止についての理論的寄与(1931)





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コメント
この記事へのコメント
過剰にやり返すこういちろうより(^^;)
2009/04/05(日) 06:59 | URL | こういちろう # BXy/Vbyc [ 編集する]

同じく僕も結構アグレッション強いです(笑)
2009/04/07(火) 00:18 | URL | ピュアリー # 6fwIY24o [ 編集する]

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