発展途上臨床さいころじすとの航跡blog版 解離性障害の治療技法(精神分析 臨床心理 心理療法)
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 本書はタイトルのとおり解離性障害、特に解離性同一性障害(DID)を対象にした精神分析技法について書かれている。

 第1章と第2章はこれまでの歴史的経緯をざっとまとめているが、要点をきちんと押さえられており、とても読みやすく、理解しやすいものとなっている。中でも精神分析と解離の相性の悪さについて指摘てしており、それをどのように統合し、うまくまとめていくのかというところはとても興味深いところだったと思う。また、解離の基本的な病理としては精神病的不安とスキゾイドであるとしており、その病理の取り扱いがポイントとなるようである。

 第3章以降では実際の治療例を参照にしながら技法について説明している。筆者の技法の特に大きな特徴は、DIDの臨床症状である人格交代についての取り扱いである。パトナムらの治療技法では、人格ごとに契約を交わしていくということをしている。しかし、本書では、人格交代は防衛の表れのひとつであり、それを転移の文脈から理解し、全体的な一人の人間として、here and nowの対応をしていくというものである。このやり方はとてもシンプルで分かりやすく、パトナムのように高度に複雑化されているものと対照的である。

 その他に、治療外転移解釈の治療意義についても大変興味深いものである。現代の精神分析ではhere and nowの転移解釈がきわめて重要な位置づけになっていることは周知の通りで、それはストレイチーの「精神分析の治療作用の本質」から出発している。しかし、この転移解釈を十分に体験できるためには下準備が必要であり、その受け皿となるのが治療外転移解釈であると本書ではしている。

 この治療外転移解釈以外にもいくつかの取り扱いについて述べられているが、その根底にあるのは、治療者が自分の逆転移を十分に体験し、十分に吟味し、それを練り上げて解釈としていくことが重要であるということである。単に知的に理解しているだけではダメなのはもちろん、受容的・共感的にすることの反治療的作用についても論じられている。

 さらにマネジメントという観点からも、抱える環境の提供や、退行の制限、外傷記憶の扱いなども論じられている。一般精神科の診察での文脈で語られているものの、これらのことは診察をしないサイコロジストにも参考になると思われる。

 あと、面白かったところは、ある症例提示において、患者が治療者(筆者)に対して寂しい思いを言語化できず、さまざまな行動化を行っていた時に、治療者が「思い出作りがしたかったのですね」と寂しさを解釈していた。その解釈は極めて治療的であると思うし、そのような的確な解釈は僕にはできないなと思った。しかし、そのすぐ後、「一緒に豆まきをした」という一文があり、とてもビックリした。あの先生がどんな感じで豆まきで遊んだのかが想像がつかなかった(笑)

 それはともかく、解離性障害の患者の多くは小児期などに深刻な虐待や性被害があるようであり、その虐待的な対象関係が治療関係の中に持ち込まれ、反復されることが多いようである。そのため、治療者は無力感や怒り、罪悪感など色々な感情が沸き起こり、情緒が揺れ、治療者としてのアイデンティティが危機に瀕してしまう。それに耐えられないと治療者が行動化を起こしてしまい、反治療的なことになってしまう。そうならないように、治療者は自分に起こっている逆転移感情をよくよく吟味し、もの思いに耽れる余裕をもつことが重要になってくる。時にはSVや事例検討会、先輩や指導者とのディスカッションなど活用することが必要になってくる。治療者は患者の受け皿となると同時に、治療者自身の受け皿を日頃から作っていくことが大切になってくるのだと思う。

 また、本著者による研修会が日本臨床心理士会の臨床心理センターで行われるようである。興味のある方は是非参加すると良いかもしれない。

日本臨床心理士会 臨床心理センター 研修講座
「解離性障害の理解と心理臨床」



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