発展途上臨床さいころじすとの航跡blog版 乳児の対人世界 理論編(精神分析 臨床心理 心理療法)
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 精神分析療法、もしくは精神分析的心理療法をしていく上で、発達論的視点から患者を理解していくことはとても重要です。単純な言い方をすると、発達の後の方での失敗や固着は、病理が軽いと言えるし、発達早期の障害はより病理が重いと言えます。

 そして、その発達論はフロイトの頃より色々と論じられてきましたが、その論じられ方は患者の回想をもとに発達論ができあがってきたという経緯があります。それは、今ここで幼児期の頃をどのようなものとして体験し、経験してきたのかという患者の主観的理解が現在の病理を理解していくうえでとても重要であるからです。

 このように主観的ゆえに臨床的に価値がありますが、やはり客観的立場にたつ発達論者からは恣意的であるというふうに批判をされていることも事実です。そのため、回想から形成された発達論と、直接観察から形成された発達論はお互いを受け入れることなく平行線をたどっていたようです。

 しかし、精神分析の中にも乳児を直接観察して、そこから色々な知見を見出していく研究も徐々にされ始めていました。ボウルヴィ、スピッツなどがその先駆的な仕事をしてきたようです。

 そういう歴史的背景の中からスターンは本書で総合的な発達論を論じています。

 まずスターンは、乳児を「被観察乳児」と「臨床乳児」に分けました。被観察乳児は直接観察の中から乳児の発達や行動を理解していく際の対象です。臨床乳児は成人患者の回想から導き出される体験としての乳児です。スターンはそれら二つの乳児を両方ともつかい、統合していく作業を進めました。これらがスターンの発達論の出発点となっています。

 そして、スターンはそれらのデータから発達論を形成していきましたが、その中心は自己感においています。自己感は自分自身を全体として機能させていくオーガナイザーとして表現されています。その自己感がどのような働きをし、どのように発達していくのかが着目点です。

 まず初めの自己感は、新生自己感と呼び、出生直後からだいたい2ヶ月間のことをさします。乳児は生まれた直後から環境からの様々な情報を取り入れ、かなり積極的に環境に作用していこうとしているようです。

 2つ目は、中核自己感と呼び、2ヶ月~6ヶ月ぐらいの時期を指します。この頃にはすでに自分と他の人との区別をつけれるようになっているようです。

 3つ目は、主観自己感と呼び、7ヶ月~9ヶ月ぐらいの時期です。前の段階で自分とは違う他の人を理解しており、さらにその上で、他の人の心についての理解まで進めていきます。この頃には他者との心の触れ合いも近くし、いわゆる情動調律も体験できるようになっています。

 4つ目は、言語自己感であり、24ヶ月ぐらいをメドに発現します。言語を獲得した乳児がそれを使って他の人とコミュニケートしていきます。言語がお互いを理解していくのに役に立つと同時に、言語であるからこそその限界として理解のズレが生じます。言語が他者との相互理解を促進する道具でもあり、逆に阻害する要因にもなり、二律背反的な世界に住むこととなります。

 このようにスターンは発達の中心を自己感に置き、4つの段階を経るとしました。スターンの発達論の今までとは違うところは、これまでの発達論では、発達の段階が上がると、前の段階の発達は捨て去られるものとなっていました。しかし、スターンは、前の段階は捨て去られるものではなく、一度獲得したら半永久的に機能し続けるものだとしました。

 また、これまでの発達論では乳児は環境に対して受身的で、無力である、とされてきました。しかし、スターンが考えた乳児はそうではなく、かなり積極的で、環境に対して能動的で、進んで様々な情報を摂取し、思った以上に色々なことを理解し、体験しているようです。

 以上が理論編の本書で書かれていたことの要約で、次の臨床編では、実際の臨床場面での話が書かれているようです。精神分析における発達論は、発達がどのように進むのかだけで話は終わりません。各発達段階での失敗や固着などが現在の病理とどのように関連しているのか、というところに着眼点があります。スターンの4つの自己感の発達も同じように、各段階の自己感の病理がどのように現在の病理に関連してくるのかがとても重要になってくると思います。

 ですので、これからまた臨床編をゆっくりと読んで行きたいと思っています。


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コメント
この記事へのコメント
TB有難うございました。
充実したブログですね。時々またのぞかせていただきます。
スターン、読んでいません。おもしろそうですね。いずれ読んでみたいと思います。
2007/07/13(金) 16:05 | URL | おかの # - [ 編集する]

>おかのさん

ご来訪ありがとうございます。この本は面白いし、読みやすいけど、奥は深いものがあります。興味があれば是非読んでみてください。
2007/07/13(金) 16:06 | URL | セーイチ # - [ 編集する]

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