発展途上臨床さいころじすとの航跡blog版 (精神分析 臨床心理 心理療法)
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このようにサイコセラピー・心理療法のプロセスをまんがによって表現するというのは極めて珍しいことではないかと思われる。その着眼点はさすがである。

本書は、基本的には精神分析的・精神力動的な観点のセラピーであるが、柔軟にその他の技法を取り入れている。例えば、感情リストを使った認知行動療法的アプローチであったり、今ここの感情的な気付きを促すゲシュタルトセラピーであったり。

そして、そうした技法は使いつつも、セラピストとクライエントが実際に話している言葉と、内で思っていることを同時に提示し、本当のところで何が起こっているのかが視覚的に、直感的に分かるようになっている。こういうことはやはり文字だけの文章では表現しきれないだろうし、漫画という表現方法によって見事に描き出されている。それは、セラピストの逆転移であったり、クライエントのセラピストには話さない本音であったり。そこには、セラピストも完璧ではなく、驕ったり、つまづいたり、先を急ぎすぎたりというような失敗がいくつも描き出されている。しかし、そうした失敗ということがセラピーの完全な失敗ということではなく、必然的にセラピープロセスに起こる出来事の一つに過ぎないということが分かる。その出来事を如何にとらえ直し、セラピューティックに扱っていくのかに意義があるように思う。そうしたことも本書では描かれていると思う。

あと、本筋とは関係ないかもしれないが、日本における漫画は特別な場合を除いて、ほとんどの場合が右から左に読み進めていくようになっている。しかし、本書は言語の関係からか、左から右に読み進めていくようになっている。その点、日本の漫画に馴染んでいる人は、意外と本書の左から右という形式の漫画は違和感があるのではないかと思う。その他に、数多くの注釈や説明が文章として下部に書かれている。それらは本書やストーリーを理解していく上で欠かせないものであるが、それを読んでいると、漫画の良さであるスピードにのった読み進め方ができないのが残念なところである。



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ローゼンフェルトはイギリスのクライン派分析家であるが、フロイトやウィニコット、クライン、ビオンのような人と比べて、そこまで日本では有名ではないが、精神病の精神分析や、投影同一化の研究、破壊的自己愛の研究に尽力をつくした人である。

彼は主に精神病や境界例の精神分析治療を行っており、精神病の内的世界を精力的に言語として記述していこうとしていた。その中で必然的に起こってくる治療の行き詰まりとその対策について考察している。その中で、クライン派らしからぬ、柔軟な態度であったり、健康な部分へのまなざしであったり、そのようなスタンスを打ち出していった。それに関して原理主義的な批判は当然あったようである。

本書はさまざまな困難な症例を提示しながら、そこで起こる転移・逆転移状況を明細化していき、そこに含まれる行き詰まりについて浮き彫りにしている。ローゼンフェルトは行き詰まりが起こる要因として、ローゼンフェルトは羨望・破壊的自己愛・共謀・分析家の柔軟性のなさ・転移による妄想形成・混乱した状態・自己愛の取りこぼし・出生前後の母親からの投影、を挙げている。

現代的にはあまり精神病・統合失調症に対して精神分析を施行するということは少なくなった。その意味で、本書のような臨床を行うことはないかもしれない。しかし、本書で示されているような精神病的な部分・行き詰まりのメカニズムはどのような臨床にも参考可能となるであろう。なぜなら、精神病的な部分はどのような人にもあり、それが強いか弱いか、前面に表れているか隠れているか、の違いにすぎないのである。つまり、例え神経症のような人でも精神病的な部分があるので、そういう意味でも、本書は大変参考になると思われる。


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