発展途上臨床さいころじすとの航跡blog版 (精神分析 臨床心理 心理療法)
上記の広告は1ヶ月以上更新のないブログに表示されています。
新しい記事を書く事で広告が消せます。

モネー・カイル(著)「認知の発達」 1968年
松木邦裕(監訳)「対象関係論の基礎」新曜社 2003年

【続きを読む】
本論考の最後にも書いているが、モネー・カイルはここで何か新しい概念を提出したり、新たな理論構築をしたりすることを目指しているのではない。ビオンに代表される、思考の理論を補完したり、補足したりするためのものであるとしている。

カイルによると、誤った概念の形成により、人間は苦しんでいるとしている。それは人生の事実を知ることの苦痛から逃れるために形成されたものである。いわゆる否認ということなのかもしれない。否認により、ある種の根源的な苦痛は回避できたとしても、それによる副作用ともいうべき苦痛がさらに待ち受けている、と言い換えることが可能かもしれない。


レオン・グリーンバーグ(著)「患者の投影同一化による逆転移のある特異面」 1962年
松木邦裕(監訳)「対象関係論の基礎」新曜社 2003年

【続きを読む】
いわゆる「投影逆同一化」についての論考である。ハイマンは逆転移を患者理解のために利用することを提唱したが、投影同一化に分析家がはまり込んでしまい、治療的な理解に結び付けるどころか、患者の投影同一化に踊らされ、時には行動化してしまうような分析家のありかたをこの投影逆同一化という言葉で表したのが本論考である。

そのようになってしまうのは、患者によってもたらされた投影同一化や、その素材の猛々しさよるもので、それに分析家が耐えられない時にそうなってしまうとしている。そうなったときには、患者と分析家のコミュニケーションが阻害され、断ち切られてしまう。それらはほとんど無意識の領域で起こっており、意識化することは困難である。


ポーラ・ハイマン(著)「逆転移について」 1950年
松木邦裕(監訳)「対象関係論の基礎」新曜社 2003年

【続きを読む】
フロイトは逆転移について提唱をしたが、基本的にはそれは治療妨害因子であり、訓練分析等で解消していかねばならないという立場であった。その後、クラインは投影同一化を提唱し、無意識的なコミュニケーションの重要性を提唱し、逆転移についての論考を進めはしたが、やはり逆転移を治療に生かす、という視点には慎重であった。

その折に、このハイマンが逆転移を治療に生かすという視点をこの論文で導入した。ハイマンはクラインの訓練分析を受け、一時はクラインの忠実な弟子・共同研究者であったが、このハイマンの論文をきっかけにして、袂を分かつことになってしまった。クラインは上記で書いたように、逆転移をハイマンの言うようなやり方で使用することについては慎重であったからだ。

しかし、クラインは逆転移の治療的活用については否定的だったが、その後、ポストクライン派と呼ばれる分析家のグループでは、主にこのハイマン流の逆転移の扱いを基本的なスタイルとしているのである。それは後にビオンはコンテイン論で投影同一化-逆転移の治療的意義を定式化していったことが大きなことであると思われる。

この論文自体は短く、端的で、分かりやすいものであり、重要な視点をコンパクトにまとめられている。その中で「患者の情緒の動きや無意識の空想についていくための、自由に湧き上がる情緒的な感受性が必要であることを述べておきたい。分析家の無意識が患者の無意識を理解するというのが、私たちの基本仮説である。深いレベルのラポールは逆転移として、患者への反応の中で分析家に気づかれる感情として、表面に現れる。これは患者の声が分析家に届くもっとも力動的な道筋である。分析家に湧き起っている感情を患者の連想や振る舞いへ照らし合わせることに、その分析家が患者を理解できたかどうかをチェックするとても価値のある手段である」としており、そこに本論文が要約されている。


スーザン・アイザックス(著)「空想の性質と機能」 1948年
松木邦裕(監訳)「対象関係論の基礎」新曜社 2003年

【続きを読む】
アイザックスは初期のクライン派精神分析家の一人であり、アンナ=フロイト・クライン論争においてクライン派の基礎理論の展開・発展に寄与した人物である。クラインは無意識的空想について論じているが、本書はそれらの性質やその機能について詳細に論じており、現代クライン派が空想について論じるときには常に参照・引用される論文のようである。

空想phantasyは一次的には身体・本能に関するものから派生したものである。それらが外的な体験や発達の中で、徐々に複雑化していき、イメージになったり、不安の内容物になったり、時には防衛として機能したりするようになる。それらはやがて現実適応の支えになるが、時によっては症状化したりすることもある。

クラインは空想について、主にその内容について取り上げ、破壊的な暴力性などの明瞭に描き出していった。アイザックスはそれを補完するものとして、その成り立ちや機能について描き出したと言えるかもしれない。


上記広告は1ヶ月以上更新のないブログに表示されています。新しい記事を書くことで広告を消せます。