発展途上臨床さいころじすとの航跡blog版 (精神分析 臨床心理 心理療法)
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 本書はネズによる問題解決技法と、ガレティによる妄想に対する認知行動療法のワークショップを収録したものである。また両者のワークショップの前に日本人著者が簡単な解説をつけているので、より理解しやすい構成となっている。

 問題解決技法とは問題解決のための考え方や計画、実行の仕方について系統的に学習していく認知行動療法の中の一つのスキルである。人間は追いつめられたり、何らかの疾患に罹患すると、柔軟に物事を考えられなくなり、気分や気力の低下のために効率的に行動することがなかなかできなくなってしまう。そのような際に、問題を効率的に対処するスキルを身につけることにより、改善していくことができるようになる。

 一方、ガレティの妄想に対する認知行動療法では、妄想が発生するメカニズムを丹念に精査し、対処能力の向上や妄想を多角的に見ていけるように患者を援助していくようである。実際のワークショップでは面接を録画したビデオが流されたようで、本書では逐語録として掲載されている。ビデオほどではないが、臨場感あふれる面接の様子が手に取るように分かり、大変参考になるだろう。

 その他にワークショップ自体の醍醐味や、海外のワークショップの良さ、さらにはその参加方法などについても書かれており、著者らのパワーには圧倒されるように感じる。海外のワークショップというと、どうしても気遅れしてしまうが、そういったハードルを乗り越えていくこといにより、たくさんの収穫があると著者らは力説しており、それは本当にその通りなのであろうと思われる。


D.W.ウィニコット(著) 「布を吸っている赤ちゃんからどんなことがわかるか」 1956年
井原成男・斉藤和恵(訳) “ウィニコット著作集5巻 両親に語る” 岩崎学術出版社 pp25-30

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移行対象を分かりやすく平易に伝えたもの。遊びを通して自分と自分でないものを徐々に区別していくという発達についても説明している。

赤ちゃんの意味不明な癖もいろいろと見ていくとこのような移行対象がそこにあるということが分かるとしている。

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SSTとはSocial Skills Trainingの略で日本では社会技能訓練もしくは生活技能訓練と訳されることが多い。社会技能・生活技能と日本語の訳すと家事をすることや公共交通機関を利用することまで含まれたニュアンスであるように感じる。そして実際にSSTと言いつつ洗濯機の使い方を学んだり、電車の切符自販機の使い方を学ぶことをSSTと誤解されていた時代もあったと聞いたことがある。本来のSSTはそうではなく主に対人コミュニケーションに焦点を当てたものであり、人と人との良い交流を学ぶものである。先の洗濯機や自販機の例で言うとそれぞれの使い方を学ぶのではなく、「どうやって使ったらよいのか教えてください」と人に頼めるように練習することがSSTであると言える。

SSTは行動療法や学習理論といった様々な基礎概念の上になりたつシステマティックな技法であるが、本書はそのようなSSTの基礎的な部分は軽く触れるにとどめて、主に実践的な部分に焦点をあてて書かれている。特に第1部では実際のSSTの進行をシナリオ形式にして紹介しており、具体的なSSTの運営をイメージしやすいように構成されている。ここでは病院のデイケア、作業所、アルコール依存症の家族教室といった状況が取り上げられている。この章では、SSTの流れの横にリーダーの動き方やその目的や根拠も添えられているので大変参考のなるだろう。

第2部ではSSTの原則や方法論、様々な場での実践報告が書かれている。

SSTは現在保険点数にも掲載されているので知名度は高く、実際にも運用されている現場が多いのではないかと思われる。しかし、SSTは般化が起きにくいということは以前から言われていることである。つまり、SSTではうまく練習はできても、実際の場面ではあまりできないということである。そのため、SSTの効果研究ではそれほどエビデンスが積み重ねられていないということも聞いたことがある。般化を起こし、効果を上げるための努力と工夫はだからこそ大切だと思われるが、この点については注意が必要であると思われる。



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ウィニコットは童話を取り上げ、童話には人間の真実ではあるが受け入れがたいことを直接的に物語に入れ込んでいることをまずは説明している。

真実だが受け入れがたいことというのは、憎しみや恐れといった負の感情や、良いと悪いのスプリット、破壊的な考え、などである。そして、特にスプリットでは、実母と継母にそれぞれに良いと悪いを割り当ててしまうことが多いようである。しかし、子どもは成長するにつれてそういったものを統合していくことができる、ともウィニコットは言っている。

童話を素材にしながら養子をもらった親に対して気遣うようにウィニコットは語りかけているいるが、多分、この頃は第二次世界大戦後に多くの孤児が生まれ、それを養子として引き取った家族が多かったのであろう。そこで愛情を巡る様々な問題が発生していたことからウィニコットはこのような話をしたのかもしれない。

また、フロイトは父親の話ばかりをしているのとは正反対に、ウィニコットは母親の話はよくするが、父親の話はほとんどでてこないことで有名である。しかし、ここでは結構父親・継父について語っており、珍しいことである



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平成22年度から認知行動療法が保険点数として算定できるようになった。その認知行動療法を行う上でのマニュアルが本書である。100ページちょっとの薄くて簡単な本なので小1時間もあればすぐにでも読める手軽なものである。

本書では認知行動療法の概要が最初に書かれており、その後ケースフォーミュレーションの方法や認知行動療法の各種の技法(ソクラテス的対話、認知再構成法、行動活性化、問題解決技法、アサーショントレーニング、スキーマの修正など)が簡潔に説明されている。また付録としてコンピュータ支援による認知行動療法も取り上げられており、パソコン好きに私には少し興味がそそられる内容となっている。

そして、CDROMも付録としてついており、著者が認知行動療法を施行している実際の様子を見ることができる(ロールプレイではあるが)。ちなみに撮影は製薬会社の協力の元で作られているので、薬物療法に対する自動思考を扱い、アドヒアランスを高めることができるように撮影されている

しかし、本書の内容もCDの内容もそうであるが、初歩の初歩、基礎の基礎を簡単に説明されているだけであるので、臨床の中で起こるさまざまな問題を柔軟に対応し、治療していく技術を身につける上では、本書では物足りないと思われる。認知行動療法を学び始めた人の最初のとっかかりとして読むのが良いかもしれない。



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ラジオ放送でさまざまな健康に関する情報を発信することについてのウィニコットの考えをまとめたもの。ウィニコットは学校での講義や授業と比較をし、ラジオでは特定の聞き手を想定できないことや、討論できないことの欠点を挙げつつ、日々の生活や育児に役立つ何かを伝えれるのではないかと模索しているようである。特に育児においては知的なものではなく、情緒的・直観的に感じるものを大切にすることを目指すべき方向として考えているようである



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本書は精神分析的な観点からパーソナリティ障害について書かれたものである。特に初心者を対象にしているようである。そのため、ややマニュアル的な構成となっており、精神分析の論文に特有の自由連想を働かせながら著者と対話していくという読み方ができにくいようにも思えた。

1部では基礎概念の説明として歴史的な経緯から、防衛機制の種類など、分かりやすく解説されている。2部ではより臨床的な点を述べられている。パーソナリティ障害は様々な臨床現場に訪れることがあり、一般的には対応が難しいと言われることが多い。しかし、パーソナリティ障害といっても様々な病態や特徴があり、全てを一緒にしてしまうことはできない。本書ではまず以下の9つのタイプに分類している。

精神病質性パーソナリティ
自己愛性パーソナリティ
シゾイドパーソナリティ
パラノイドパーソナリティ
躁うつ性パーソナリティ
マゾヒスティックパーソナリティ
強迫性パーソナリティ
ヒステリー性パーソナリティ
解離性パーソナリティ


さらに、カーンバーグの病態水準の考え方を用い、神経症レベル・境界レベル・精神病レベルといった重症度を評価している。タイプ別と病態水準の2つの軸からパーソナリティ障害を見ていくとするところに本書のユニークさがあると言える。例えば、同じパラノイドパーソナリティでも、神経症レベルで健康に近い患者から、精神病レベルの非常に重たい患者までいる、ということが分かる。

精神分析と言っても様々な学派や理論があり、それぞれ独自に発展してきているところもあり、相互に合い入れない部分もあったりする。しかい、本書では様々な精神分析の学派の考えをより柔軟に取り入れ、適宜使い分けている。折衷的と言えるだろう。対象関係論的に述べられていたかと思えば、急に自己心理学などが出てきて、人によってはビックリしてしまうかもしれない。また精神分析は週に4回以上のカウチを用いた自由連想を行うのがスタンダードであるが、本書ではそういうやり方を厳密に用いた臨床を想定はしていないようである。週1~2回の対面方式による心理療法を想定しているようである。現実的にはこのようなスタイルの心理療法が多いだろうし、実状にマッチしていると言える。そのような臨床の中で本書は生かされるのではないかと思われる。


D.W.ウィニコット(著) 「小児医学と児童期の神経症」 1956年
北山修(監訳)“小児医学から精神分析へ-ウィニコット臨床論文集-” 岩崎学術出版社 pp386-393

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 小児科医に向けて書かれた論文。ウィニコットは身体面の医学的発展については賛美しつつも、精神面を見れる小児科医が必要であることを力説している。また、精神科で扱っている患者には乳幼児期の問題を抱えていることが多いので、それに対して小児科医ができることは多いとも主張している。

 最近の日本の小児科でも発達障害を扱うことが増えてきていると聞いたことがある。発達障害は薬や医学的な対処でできることは多くなく、養育の指導や親のサポートが必要となる。そういう時、精神科や精神分析に限定するかどうかは別として、心理的な知識と技術は必要になってくるものと思われる。

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 現代では認知行動療法がかなり広まっており、日本でも保険点数として請求できるようになってきている。その大元が本書で取り上げられているベックの認知療法である。本書は381ページにも及ぶ大作であり、認知療法を系統的に学ぶ上でのテキストとして構成されている。また巻末には付録として認知療法で使われる検査や尺度も載せられている。

 認知療法というと代表的にイメージされるのは認知再構成法・思考記録表である。これは非機能的な認知を記録し、よりより機能的な認知を見出していくというスキルである。しかし、認知療法=認知再構成法ではなく、ベックはそれ以外のスキルも取り入れており、様々な方法で認知の変容を促していくようである。そこには行動変容を促すことによって、認知変容していく行動的な技法も紹介されている。このような行動面をも焦点にしているからこそ行動療法と強く結びつき、認知行動療法として統合されていったのではないかと思われる。

 そして第18章では、認知療法のこれまで行われたいくつかの効果研究が掲載されている。認知療法の売りの一つがエビデンスが示されていることにあるのだが、本書が書かれた1979年の段階で既にこれだけの効果研究がなされているのは驚きである。またその効果研究は現在も行われ続けており、ほとんどの研究で効果が確認されているようである。このことが認知行動療法の発展につながっているのであろう。

 本書は30年以上も前に出版されたものであり、用語や技法に多少の古めかしさは正直なところあり、現在ではこの本だけで認知療法・認知行動療法をするには限界があることは否定できない。その後に開発されたさまざまな技法の習得は必須である。しかし、それでも認知療法の出発点である本書にはさまざまなアイデアや着想が載せられているので、基礎を押さえるという意味では読んでおくととても良いであろうと思われる。


D.W.ウィニコット(著) 「反社会的傾向」 1956年
北山修(監訳)“小児医学から精神分析へ-ウィニコット臨床論文集-” 岩崎学術出版社 pp373-385

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 ウィニコットは小児科臨床や精神分析臨床だけではなく、様々な社会的活動も行っていた。ラジオの育児相談などもしていたようだし、第二次世界大戦の時には児童の疎開にも携わっていた。さらには非行少年を自宅に引き取り、世話をすることもしていた。本論文はこのようなウィニコットの社会的活動の中で見出した反社会的な傾向に対する精神分析的な見解をまとめている

 反社会的傾向について愛情剥奪と関連があるとし、大まかに二つに分けている。一つは盗み。もう一つは破壊である。盗みについては、母親を探し求め、見つけ損なうとまた他のところで探し求める行為としている。破壊については、衝動的な行動の重荷に耐えられる環境を探している行為としている。このため、両方とも精神分析的な対応が必要なのではなく、マネージメントが必要であり、彼らの望みに合わせていくことであるとウィニコットは言っている。

 ウィニコットは反社会的な少年らとの付き合いの中で、うんざりしたり、怒ったり、時にはお尻を噛み付かれたり、施設では抱えきれずに感化院(日本で言うところの少年院みたいなところか?)に送致になったりといった、大変な経験をしてきたようである。このような経験の中でウィニコットは反社会的な少年らの最早期の環境の欠損に思い至ったのかもしれない。環境の欠損が精神病や反社会性につながるということなのであろう。


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