発展途上臨床さいころじすとの航跡blog版 (精神分析 臨床心理 心理療法)
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D.W.ウィニコット(著) 「精神病と子どもの世話」 1952年
北山修(監訳)“小児医学から精神分析へ-ウィニコット臨床論文集-” 岩崎学術出版社 pp262-273

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 前年の1951年に「移行対象と移行現象」の論文が出ているが、その延長上として、乳幼児の世話と精神病の治療が本質的に同じであることを論述している。乳幼児の母親や環境との関係をウィニコットは図を用いて説明しており、侵襲とそれの受け入れ、または引きこもりが分かりやすく述べられている。

 ただ、図はフリーハンドで書いたような汚いものなので、もう少しキチンと書けば良かったのに、なんてことを思ったりもするが。それはさておき、ウィニコットはそうした乳幼児と母親との関係で、環境の失敗によって被害妄想が発現し、精神病になるという環境論を展開している。そして、そのような精神病に発展しないための偽りの自己の発達についても述べられている。

 また、脚注でウィニコットはクラインの妄想的ポジション(妄想分裂ポジション)と関連があると書いている。前年の論文でクラインとの決別があったわけであるが、ウィニコットはそれでもクラインに近づきたい、認められたいという思いが強かったのであろうと思われる。



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 非定型うつ病とは、うつ病の症状と共に(1)気分反応性(2)体重増加(3)食欲増加(4)過眠(5)鉛様麻痺(6)拒絶への過敏性などが見られる障害である。また、うつ病は自責感が強いことが多いが、非定型うつ病では他責的になることが多いようである。これらのことから境界性パーソナリティ障害(BPD)との異同が議論になるが、BPDほど人間関係の巻き込みは酷くないことなどで鑑別できるようである。

 本書ではこうした非定型うつ病について様々な面から検討と議論がなされており、その特徴が論じられている。そして、その判別のためのテスト(非定型うつ病診断スケール)も巻末に付録として添えられている。

 非定型うつ病に関する文献は日本ではそれほど多くはないので、本書は貴重であると言える。そしてその特徴を知り、診断をしていく上で参考になることが多いように思う。ただ、治療の面については本書ではあまり取り上げられておらず、その上薬物療法に関する記述の割合が多い。心理療法・精神療法については“認知行動療法が良いだろう”ぐらいしか書かれていないので、この辺りは物足りないように思われた。


D.W.ウィニコット(著) 「情緒発達との関連でみた攻撃性」 1950-55年
北山修(監訳)“小児医学から精神分析へ-ウィニコット臨床論文集-” 岩崎学術出版社 pp241-261

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 本論文は3部構成になっており、1部は1950年に発表されたもので、攻撃性を活動性activityと置き換え、原初の子どもの機能であるとしている。また、発達の中で部分対象と全体対象の中間段階について主に論じており、後の移行段階につながる概念が提示されている。2部は1955年に発表されたもので、環境からの侵襲が大きくなった際に、本当の自己を守るための偽りの自己が発達することを論じている。そして、自我の正常な発達にはほど良い環境が必要であることも強調されている。1954年に発表された3部では、ほど良い環境としての母親を詳細に論じ、乳幼児のニードに完全に適応することよりも、適度な失敗から欲求不満・怒りを生み、それが発達を助けることが主張されている。

 この時期のウィニコットはクライン派からの離脱が起こっている時期である。次の1951年に発表された「移行対象と移行現象」で決別が決定的になったのであるが、本論文はその前後に書かれており、ウィニコットとクラインの考えの違いが明確になってきていることがよく分かる。クラインは乳幼児の攻撃性をどのように和らげるのかに焦点があるが、ウィニコットは攻撃性を活動性と捉えなおし、環境側の要因に焦点を当てているのである。



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 原著のタイトルは「The Art of Integrative Counseling」であり、日本語訳ではArtを技術と訳し、「理論と実践」という副題を追加している。日本語と英語のニュアンスであるが、技術・理論・実践というとスキルをイメージするのに対してArtだともっとセンスや感覚の意味合いが含まれるだろう。本書の内容をみると、コーレイ氏は確かにカウンセリングの手続きについてももちろん言及しているが、そのバランスの取れた各技法の取入れなど、Artと呼ぶほうがふさわしい感じもしないではない。

 序論にも書かれているが、本書はさまざまな心理療法・カウンセリングの理論や技術を統合していくことを目的としている。どういうものを統合していこうとしているのかというと、精神分析、認知行動療法、ナラティブ療法、実存分析、ゲシュタルト療法、フェミニストセラピー、解決志向アプローチ、再決断療法、現実療法、アドラー派療法、パーソンセンタード療法、サイコドラマ、家族システム療法、などである。そして、それぞれの基礎的な知識はあるものとして本書は書き進められている。つまり、ある程度は各学派のことを知っていることが前提であり、そういう意味では本書は初心者よりは、中級~上級者向けといえるのかもしれない。

 また、本書の流れとして、カウンセリングの開始から終結に向けての要所ごとに適用されている技法や技術が紹介されている。さらには、読者がクライエントの立場となり、さまざまな質問に答えていくことにより、カウンセリングを受けているかのように体験的に理解できるように工夫が凝らされている。

 そして、本書には別売のDVDもあり、ルースというクライエントに対してコーレイ氏が実際にカウンセリングをしている様子を動画を通してみることができる。残念ながら私はそのDVDが無いので見ていないが、その一部は公開されているので、以下に挙げておく。



 このような実際の映像をみることにより、よりリアルに学習することができると思う。

 しかし、カウンセリングの統合というテーマは古くて新しいテーマであり、たくさんの人がその人なりの統合をしてこようと模索してきていることと思う。第9章「統合的視点」で少し述べられているが、一口に統合と言っても様々である。一つの軸としては、各技法を一つにまとめていく統合~各技法を適宜しようしていく統合、がある。もう一つの軸としては、カウンセラーの拠って立つ立場として、理論までも統合して一つの理論を構築すること~理論をも心の中で適宜使い分けていくこと、があるかと思う。もちろん、それぞれ二者択一というよりは、連続線上のどこかにあるということだが。本書のコーレイ氏について言うと、一つ目の軸としては「各技法を適宜しようしていく統合」であり、もう一つの軸としては「理論をも心の中で適宜使い分けていくこと」に当たるのではないかと個人的には思う。ただ、どちらかというと実存分析が基本的な基盤であるとコーレイ氏は言っている。

 あと、私自身が精神分析をオリエンテーションとしているのもあって、本書の精神分析・力動的な技法についていくつかの指摘をする。これまでの統合的と称するカウンセリングや一般的なテキストなどでは精神分析は分析の隠れ蓑の位置におり、頑なに中立性を守り、過去を探索する、といったことが言われてきた。その点、本書では対象関係論などからひっぱってきて、そのような古典的な精神分析の理解に留まらない、現代的な意味を含めているところが大変評価できるところである。例えば、転移を通して今ここでの関係を大切にすることなどコーレイ氏は指摘している。ただ、逆転移については、カウンセラーの個人的な葛藤の現れであり、戒めるもの、としているところは残念である。逆転移は単にカウンセラーの個人的な葛藤だけではなく、転移との絡み合いの中で生起するものであり、逆転移を通してクライエントを理解していくことのできるツールでもある。さらに、転移の扱いについても、どこか教育的で指導的になっており、解釈というものにはなっていないようである。それはこのような統合的なカウンセリングの枠内でのことなので、そこまで求めるのは酷なのかもしれないが。

 最後に本書の目次を以下に掲げておく。

著者について
序論

第1章 カウンセリングのはじめ  
 統合理論的アプローチ:概観
 クライエントの立場の体験 
 ルースのケースの紹介 
 ルースのケースに適応される理論の概観 
 結語

第2章 治療的関係  
 作業関係の発達
 クライエントになる:協同関係の中でのシェア 
 作業関係の形成におけるカウンセラーの役割
 ルースに対する私の統合的アプローチ
 結語

第3章 治療目標の確立  
 クライエントになる:カウンセリング目標の設定
 目標志向行動と目標設定 
 ルースとのカウンセリング目標の明確化 
 結語

第4章 多様性の理解と対応  
 多文化的関心 
 カウンセリング過程の中心としての多様性
 多様性の観点の理解に適用される理論 
 スピリチュアルな領域の受け入れ 
 多様性の観点からのルースの理解 
 結語

第5章 抵抗の理解と対処  
 抵抗の力動の理解 
 抵抗の尊重と再構成
 クライエントになる:あなた自身の抵抗の体験
 ルースの抵抗の理解 
 クライエントの抵抗に対処するためのガイドライン 
 結語

第6章 カウンセリングにおける認知焦点化  
 認知焦点化の利点と限界 
 クライエントになる:認知行動的テクニックの体験 
 認知的視点からのルースとの作業 
 結語

第7章 カウンセリングにおける感情焦点化  
 感情焦点化の利点と限界 
 クライエントになる:感情焦点化セラピーの体験 
 感情焦点化の作業 
 ルースのカウンセリング:感情の識別と探求 
 結語

第8章 カウンセリングにおける行動焦点化  
 行動焦点化の利点と限界 
 人間の機能の7つのモダリティの理解 
 クライエントになる:行動療法の体験 
 行動契約の発展 
 行動焦点化を使ったルースとの作業 
 結語

第9章 統合的視点  
 セラピー学派間の共通要因の探求 
 私の統合的アプローチの基礎 
 行動志向的セラピーの概観 
 認知的,感情的,行動的方法でのルースとの作業 
 主たる理論を深く学びながら,統合にも開かれていること 
 統合の利点と限界 
 結語

第10章 転移と逆転移  
 転移の諸見解の比較 
 転移と逆転移のつながり 
 転移の治療的作業 
 逆転移問題の対処法 
 治療的関係における自己開示 
 ルースとの転移と逆転移のワーク 
 結語

第11章  過去が現在に与える影響の理解  
 過去,現在,未来のつながりの理解 
 クライエントになる:あなたの過去・現在・未来の吟味 
 ルースの過去・現在・未来についての作業 
 結語

第12章 決断と行動変化への作業  
 再決断療法の理解 
 再決断療法の行動変化への適用
 クライエントになる:再決断プロセスを体験 
 ルースとの再決断の作業 
 結語

第13章 評価と終結  
 効果的終結のためのガイドライン 
 クライエントになる:あなたの変化の認証 
 ルースの治療経験の評価 
 結語

文献
事項索引/人名索引
監訳者あとがき
訳者一覧





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 統合失調症についての認知行動モデルからの説明と症例提示から本書は構成されている。

 統合失調症は伝統的に遺伝要因が強く、精神療法的な接近は不可能と言われてきていた。その為、僕も最初に精神病院に勤めた時には、幻聴や妄想について当たらず障らずに関わるように言われていた。陽性症状を否定しても抵抗が強くなるし、肯定しても助長させるだけであるという理解が根本にあったからだと思う。

 しかし、最近の研究では単純にそのような理解はせず、様々な技法を駆使して陽性症状のみならず陰性症状に対しても関わっていくことができることが示されている。そこには、統合失調症の様々な症状は遺伝的な影響が強いとは言え、健常者の体験と連続線上にあり、質的な違いはそれほどないということが明らかになってきたことも関係している。

 本書の1部では、そうした統合失調症の諸症状や各種の特徴を網羅し、様々な研究を提示して、概説している。また2部では症例を提示しながら、そこで使われている各種テクニックが紹介されている。ただ、症例についてはあまり具体的に提示されておらず、実際にどのようなツールを使い、どのように施行しているのかがやや見えにくい印象であった。また、3部では今後の展望として治療効果を評価しているが、まだ研究途上なのか、どのような研究をして、どのぐらい効果があるのかが明記されていなかったところが残念なところである。


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