発展途上臨床さいころじすとの航跡blog版 (精神分析 臨床心理 心理療法)
上記の広告は1ヶ月以上更新のないブログに表示されています。
新しい記事を書く事で広告が消せます。


【続きを読む】
 認知行動療法(CBT)は当初は恐怖症やうつ病の治療として始まったが、最近ではさまざまな難治性疾患に対しても使われるようになってきている。本書はそうした中で統合失調症の幻聴をターゲットにしたCBTについて書かれたものである。これまで統合失調症に対するCBTはあったが、従来のCBTは幻聴そのものの症状を消去することを目的としていたようである。しかし、その方法ではなかなか上手くいかないということで、幻聴そのものではなく、それに付随する苦痛や問題行動をターゲットにしたCBTを著者らは開発した。

 著者らは、幻聴をきっかけや状況としておき、それに対する認知の変容に介入することにより、コントロール感を増し、苦痛を下げることを目的としている。また、本書では幻聴の威力、強さ、力関係、被コントロール感などを客観的な尺度として採用し、CBTの前後でその比較をしている。この幻聴に対する力関係がなぜ起こるのかという仮説として、著者らは社会階級理論を持ち出している。これは、幼児期の人間関係のパターンが幻聴との間でも繰り返されている、というものである。その為、力関係のパターンを変化させることで、幻聴に影響される度合いを少なくするということを目指せるということなのであろう。

 これらの設定の上で、7名の事例を本書では掲載している。ただ、事例といっても、どのようなプロセスを経て、どれぐらいの期間で、どういう具体的なやり取りがあったのか、といった中身が詳しく書かれておらず、具体的によく分からない。ただ、幻聴に対する認知を変容させるため、認知再構成法を用いていたり、幻聴に実際に従わなかったらどうなるのかといった曝露法を用いているのではないかとは分かるのだが。

 そして、最終章ではこのCBTのランダム化比較対照試験の結果が載せられている。結果として31名の被験者に対してCBTが施行され、中断などのケースもありつつ、従来の精神医学的治療と比較して、CBTの効果の大きさが立証されている。また、付録として、この研究で使われた、各種テストの一部が抜粋されており、大変参考になると思われる。

 これまで統合失調症の陽性症状に対しては精神療法は適用にはならないと信じられてきたが、このようにCBTのチャレンジによって技法の開発が進み、効果が立証されてきている。CBTのトレーニングシステムの確立も必要であるが、こうした統合失調症への臨床心理士の介入が認められることにつながると良いのかもしれない。


D.W.ウィニコット(著) 「原初の情緒発達」 1945年
北山修(監訳)“小児医学から精神分析へ-ウィニコット臨床論文集-” 岩崎学術出版社 pp159-176

【続きを読む】
 ウィニコットは小児科医としてのキャリアが始まり、その後に精神分析を勉強し、精神分析家の資格を取得した。そして精神分析の領域では主に精神病者などの重篤な患者を対象にした分析を行っていた。本論文はそのようなウィニコットの経験から書かれたもので、主に精神病者の心の在り方と、早期乳幼児期の心の在り方の似ている点について述べているのである。

 精神病者の特徴としてまずは「無時間性」を挙げている。フロイトの無意識には時間がない、といった言及を思い起こすことができるが、ウィニコットは症例を提示しながら、曜日や時間の概念がなく、それゆえ成長もない特徴を描いている。そして「乖離」についても挙げており、これは矛盾するいくつかの心性が同時に心に起こることを示している。ブロイヤーの“アンビバレンツ”を彷彿とさせるものである。

 そしてこれらのことが抑うつポジション・思いやりの段階以前の状態であるとしている。その段階以前といってもクラインの妄想分裂ポジションとはまた違うものをウィニコットは見ているようである。クラインの妄想分裂ポジションは攻撃と迫害が織りなす殺伐とした世界を描き出しているが、ウィニコットはクラインのような殺伐とした世界ではなく、解体へと至る無統合な状態を描写しているようである。ここに多少クラインとは異なる理論展開や世界観を持っていることがうかがえる。特に空想を欲求不満の結果によって生み出されたものではなく、“錯覚”の体験から生み出されていることが主張されているところにウィニコットらしさがあるように思う。

 また細かい話であるが、ウィニコットは本論文では良い解釈について触れており、「良い解釈とは愛の表現であり、よい授乳や世話の象徴なのである」としている。クラインやビオンのような理解を現時点ではしているようである。後のウィニコットは解釈を「分析家自身の限界の提示」としていたところに、理論の変遷が見て取れるようである。

 しかし、精神分析を通して精神病者の内的世界に勇気を持って対していくウィニコットのすごさには感服する。そして、その過程で今日まで通用するような理解を創出したことで、精神分析の大きな発展があったものと思われる。現代ではなかなか精神病者の精神分析をする機会はないのが残念である。



【続きを読む】
 本書は認知行動療法に基づいてパニック障害に対して集団療法を行うためのマニュアルである。認知行動療法はうつ病の研究から発展したが、今日では不安障害にも適用を広げ、治療のためのモデルやプロトコルが比較的しっかりとできている。また、さらには人格障害や物質依存性障害、統合失調症にまで適用が広がってきてもいる。

 パニック障害に対する認知行動療法のエビデンスを網羅し、具体的な治療方法をことこまかく本書では掲載している。それらを集団の中でどのように適用するのかが記載されている。著者たちが行っているパニック障害の集団認知行動療法は全部で3週の間、ほぼ毎日朝から晩まで治療に費やすという集中的な方法を行っている。最初の1週間は心理教育をみっちりとし、呼吸法・リラクゼーション法・暴露法のやり方を教え、練習し、実際に施行するということをしている。その後、1週間かけて、家に帰り、自分たちで認知行動療法を行い、再び施設に戻ってきて、仕上げをする、という段取りとなっている。

 このような集団療法をするための、受け入れ側のキャパや準備などかなりのものとなるであろうが、それをクリアすると、パニック障害の患者のためにはとても役立つものになるのであろう。

 最後の7章では、患者さんが携帯し、自ら読むためのテキストが載せられている。やや難しく、細かく書かれているので、ある程度の理解能力がないと理解することは難しいかもしれない。ただ、このように自分で勉強していくことは認知行動療法ではとても大切になってくるので、これも重要なところなのであろう。


上記広告は1ヶ月以上更新のないブログに表示されています。新しい記事を書くことで広告を消せます。