発展途上臨床さいころじすとの航跡blog版 (精神分析 臨床心理 心理療法)
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D.W.ウィニコット(著) 「躁的防衛」 1935年
北山修(監訳)“小児医学から精神分析へ-ウィニコット臨床論文集-” 岩崎学術出版社 pp137-158

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 この論文によってウィニコットはイギリス精神分析学会の正会員になることができたものである。躁的防衛自体はクラインが作った概念であるが、ウィニコットは躁的防衛の理論を整理し、症例を提示して論じている。ウィニコットは“空想”を“内なる現実”と言い換え、躁的防衛は内なる現実からの逃避であるとしている。

 そして躁的防衛の諸特徴として「内なる現実の否認」「内的現実から外的現実への逃避」「生きたままの仮死状態」「抑うつ感のいくつかの側面の否認」を挙げている。これらは抑うつの中の愛・貪欲・憎しみに対して抱えきれないことから否認・逃避しているのである。その後、ウィニコットは4つのさまざまな症例を元にして躁的防衛について論じている。いずれも抑うつポジションを適切に分析することにより、情緒の発達をうながしうることを例証している。

 臨床でもこのような躁的防衛はしばしば見られるが、単に防衛していることを解釈するのではなく、“何を”防衛しているのかについて考えることで治療的になるのである。その意味でこのウィニコットの論文は非常に役立つように思える。



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 本書は疑似科学をテーマにして科学とは何か?について考える科学哲学の本である。疑似科学と言ってもたくさんあるが具体的には創造論・占星術・超心理学・代替医療が取り上げられている。

 科学は真理を探究する学問であり、方法論であるが、では科学とは何か?というとこれは大きなテーマになってしまう。また、単に何か特定のものを疑似科学と認定するために勝手に新たな基準を設けても仕方がない。そうではなく、合理的な基準をあらかじめ設定し、それによって疑似科学か科学を線引きすることが必要であろう。

 科学というと、帰納法や演繹法が有名であるが、これだけでは様々な抜け道があり、科学かどうかの基準とするのは無理がある。そこで登場したのがポパーの反証主義で、反証可能性がない理論や説は科学ではないとする主張である。例えば、どんな現象でも神の意志を原因にしてしまうと、神の意志ではないということを反証することはほとんど不可能となる。これは典型的に反証可能性のない疑似科学となる。また、反証主義にも弱点があり、その後にパラダイム論などの観点から議論が進められている。

 さらには、科学哲学のテーマかどうかは分からないが、第5章では統計学も取り上げられており、人間のバイアスを最小限にするための具体的な方法が提示されている。

 しかし、科学ではないものがすべて疑似科学かどうかではない。疑似科学である一つの要件としては、科学ではないのに科学であると主張していることにある。例えば、第4章で紹介されている代替医療では、治療効果がないのに治療効果があると主張しているところに問題があるのである。

 そして、最終章で疑似科学と科学の線引き問題の総まとめをしており、簡単に要約すると線引きをせずに線引きをするというトリッキーな方法を行っている。詳細についてはまた本書を見てもらえたらと思う。


D.W.ウィニコット(著) 「在宅で取り扱われた症例」 1955年
北山修(監訳)“小児医学から精神分析へ-ウィニコット臨床論文集-” 岩崎学術出版社 pp123-134

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 この論文で紹介されている症例は6歳女児のキャサリンである。キャサリンは両親と姉と妹の5人家族である。彼女は叔母さんの結婚式をきっかけとして、幻覚や妄想が出現し、精神病状態であるとウィニコットによって診断された。しかし、ウィニコットの治療枠に空きがなかったため、短い時間のマネージメントを中心とした関わりしかもてなかった。ウィニコットはマネージメントを通して家族やキャサリンに会い、家族の中で精神病院のようなケアを提供できるように援助した。そのことにより、発症から1年3ヶ月後にはキャサリンは回復し、学校にも登校できるようになったのである。

 本症例ではないが、現代でも様々な事情により、インテンシブな治療を提供できないことは多いように思う。そういう時、短期的・断続的・間接的な関わりを通して、如何に援助できるのかを考えねばならない。そういう時には直接病理を扱うことはできないが、家族を支えることにより、患者に良いケアを提供できることが多々あるだろう。現代的な視点でいえばエンパワと言えるかもしれない

 しかし、それらが、消極的に選択せざるをえないこともあるだろうが、もっと積極的にこのような援助を選択することも考えられる。すなわち、治療者の介入を最小限にして、もっとも効率的に患者に援助を提供できる可能性も本論文からは示されているように思う。



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