発展途上臨床さいころじすとの航跡blog版 (精神分析 臨床心理 心理療法)
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 自己開示の概念も抑うつのそれも心理学や精神科学の中ではとても重要なものであり、色々な方面で研究がされてきているようである。そして、この二つの概念を絡めた研究も多数である。それは本書の序章でレビューされているのを見るだけでもかなり膨大だと分かる。

 本書ではその膨大な文献をレビューした上で、その因果関係がまだ明確にされていないので、明確にしていくことが目的であると書いている。そして、後半にはそれを記述的研究から実証的研究、さらには臨床実践を通して明らかにしていっている。それらをあきらかにする研究は6つほどあり、これらをすべて一人で行ったということは大変苦労も多かっただろうと推測される。

 さて、本書で抑うつの人の自己開示は不器用なものが多く、それが抑うつを促進させているというところがザックリとした主旨である。しかし、なぜ抑うつの人の自己開示は不器用なのかということに関しては、認知的な歪みがあるからと簡単に記しているだけで、それ以上は明らかにされていなかった。著者自身はCBTをオリエンテーションとする臨床家であり、研究者なので、結果や効果といったことに主眼を置いているからだろうとは思うが。しかし、僕としてはその抑うつの人の歪みって一体何なのだろうか?それはどこから来ているのだろうか?ということがどうしても疑問に思ってしまう。もしかしたら、これまでの研究で明らかにされていることなのかもしれないが。

 臨床をしていると、変な自己開示をしてしまうクライエントは確かに多いような気がする。そういうのをあまり明確に定義付けることなく、守りが弱いとか、バウンダリーが曖昧、といったことで理解していたが、本書を読んで、そのあたりの事をもう少し明らかにしていきたいと思うようになった。



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 心理検査・心理テストは施行するだけではなくて、それを解釈し、レポートにまとめるという作業をする必要がある。心理検査からはじき出された数値を見て、それが何を意味するのかを読み取り、読み手に分かりやすくレポートを書かねばならない。施行するだけならある程度マニュアルを読めばできるのだが、解釈やレポートにまとめるということは意外と熟練の技が必要になってくる。本書はそうした心理検査のレポートをまとめるという作業をどのようにしていけば良いのかについて分かりやすく、コンパクトに記載されている。

 本書ではレポートに記載する事項を、相談内容・背景情報・行動観察・検査結果・解釈・診断(見立て)・要約・指針といった8項目挙げており、それぞれについてかなりつっこんで説明している。さらにはフィードバックや倫理綱領、コンピュータの活用といったことも補足し、最後に4つの事例を挙げて具体的にレポートの書き方を示している。また、各章の最後には「理解度チェック」として簡単なクイズをだしており、ちゃんとその章が理解できているのかをチェックできるように配慮されている。

 このように分かりやすく、かつ実用的に書かれているので、初心者にはもちろん勉強になる他、ベテランの方にも自分の心理アセスメントレポートについて振り返ることができる。僕も本書を読んで、見落としていたところ、あまり考えていなかったところなどが浮き彫りになり、次の日からすぐに使える箇所がたくさんあり、大変役に立ったように思う。

 ただ、本書で取り上げられている心理検査は、子どもの知能検査や発達検査に限定されており、人格検査などについてはほとんど触れられていないのが少し物足りないところかもしれない。また、日本では使われていない心理検査などが取り上げられているので、結果やレポートのところどころで分からないところもあった。

 さらに、本書ではレポートは「コンパクトに」という心構えが書かれていたが、本書に載せられていたレポート例文などは、かなりの分量(第9章の事例1では、37行×30字で16ページのレポート)のものであり、読むだけでも大変な印象を受けた。もちろん、分量があるだけに、詳細で事細かく説明されているので、じっくりと読めばとても役立つレポートなのだろうと思うが。

 僕は主に病院などで心理アセスメントのレポートを書くが、読み手である医師やPSW、看護師は結構忙しくしており、その中でこれだけの分量を読んでくれることは無いように思う。僕の場合はどんな心理検査をしたとしても、だいたい1000文字以内でA4用紙1ページの中に収まるようにしている。これだけの分量は多分、本書で書かれているのに比べるとかなり簡単で詳細さに欠けると思うが、僕の経験上、これぐらいの少ない分量にしておかないと読んでもらえないと思う。せっかく時間をかけて心理検査を施行し、レポートを書いても読んでもらえないと意味がないだろう。



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 逆抵抗という言葉はあまり聞きなれないが、簡単に言うと、治療者が起こす抵抗のことであり、治療を妨げようとする力動が治療者に働くことを指すようである。抵抗という概念はフロイトから始まり、精神分析はこの抵抗の発見によって治療が進展するとまで言われていたほど重要なものである。この抵抗はもちろん治療の妨げになるものであるが、それによって患者は自らの身を守っているのであり、生きていく上で必要不可欠な心の動きである。しかし、その抵抗によって不利益も生じるのであり、それが症状や疾患と言われるものである。このようなものが患者だけではなく、治療者にも起こっているというのが著者の主張である。

 この逆抵抗は逆転移が行動化したものであると著者は捉えており、逆転移を理解することによって防ぐことができるとしている。逆転移の概念はこれもフロイトから始まり、今日では主に対象関係論学派においては大変重要な位置を占めている。ちなみに著者であるストリーンは本書の解説を読むと、古典派フロイディアンに属する人のようである。一般的に古典学派は中立性や分析の隠れ身を重視し、治療者は鏡に徹しなければならないと考えていることが多いが、本書では逆転移というものをしっかりと捉えようとしているようで、あまり古典学派的には見えないように思える。しかし、最近の古典学派も対称関係論の影響を受けて、こういう逆転移なども活用していく方向になってきているのかもしれないが

 ただ、著者の逆転移・逆抵抗の捉え方を見ていると、主に治療者の個人的な葛藤やコンプレックスから引き起こされるものとして理解されているようであった。逆転移は確かにそういう部分も大きいが、患者との関係の中で投影同一化によって投げ込まれている逆転移もあり、その視点があまりないようであった。すなわち、この投げ込まれた逆転移を分析することにより、患者をより深く理解できるようになるのである。そういう意味では、著者の逆抵抗・逆転移は単に治療の妨げを防ぐためという意味合いが強いのかもしれない。

 本書は治療の各局面で起こる逆抵抗を事細かく説明し、豊富な事例を交えて分かりやすくしようと心がけられている。その為、じっくりと読むのには良いかも知れないが、同じことを何度も繰り返しているので、単調さを感じてしまうところもあった。


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