発展途上臨床さいころじすとの航跡blog版 (精神分析 臨床心理 心理療法)
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 ブリーフセラピーの中に位置付けられる比較的新しい心理療法の技法です。本書では従来の心理療法は問題志向的であり、問題解決には向いてないとし、問題そのものを焦点とせず、解決だけを焦点とするのがこのソリューション・フォーカスト・アプローチ(以後SFA)であるとしています。その具体例として第1章で問題志向的アプローチとSFAを比較して、SFAの方がうまく進んでいますよ、というケースを紹介しています。それはそれで分かるような気がしますが、問題志向的アプローチを行っているのは研修を積んでいない学生であり、SFAを行っているのはSFAに長けた臨床家なので、単純に比較してSFAの方が良いとするのはちょっと乱暴かなと思いました。

 また、本書のあちらこちらで、問題をそのものを焦点にしても心理療法は進まないという実例やお話が出ているのですが、それは単に問題志向のやり方(例えば精神分析など)が下手だからじゃないかなって思ったりもしました。僕の経験上、解決志向的なことをしなくても、本書で書かれたような散々なことにはならないようにも思います。

 ただ、下手だからダメということはあまり思っておらず、下手だからこそ、それを補うように新しいやり方や理論を作り上げることができるのだろうと思います。たとえば、フロイトははじめ催眠から臨床を出発させましたが、催眠の方法がかなり下手だったのではないかと言われており、それを補うように精神分析という新しい方法を作っていきました。同様に、ロジャースも初めは精神分析のトレーニングを受けており、その後に来談者中心療法を作りました。その転換点をドラマチックに描写している論文もありますが、ようは精神分析が下手だったから、新しいやり方として来談者中心療法を創設したのかなと思います。だからといって、新しく作っていくものに価値がないとは言いません。こうやって心理療法の発展があるのだろうと思います。とすると、下手というのはオリジナリティを作っていくために必要不可欠なものなのでしょうね。上手いとそのままやっていくので発展がない。そう思うと日々自信のない僕なんかは希望を抱くことができそうです(笑)

 本書に戻りますが、SFAのやり方の場合、初回からバシバシ介入していくことをよくするみたいです。というのも、SFAでは従来の方法よりも、見立てということはあまり重視していないことが影響しているのでしょう。そしてそれらのことについても本書では説明がなされていましたが、しかし、やはり僕には見立てをあまりしないということが、どうしても危なっかしく思えます。というのも、患者は色々な悩みや辛さで来談されますが、そこには器質的問題が隠されていることがあります。脳腫瘍やホルモン異常などで、心理的症状が出てくることはよくありますし、その症状が現実的ストレスから来ていると勘違いしてしまうこともあります。そういう時に初回からいきなり解決だけを念頭において介入していくと手遅れになりそうな気もします。その他にも統合失調症などが見えない形で進行していることもあります。そういう時には解決云々も必要かもしれませんが、まずは薬物などが必要になってきます。

 なんだか批判ばかりになってきたので、良いところの方にも目を向けてみたいと思います。本書で紹介されているケースは、事件被害者や貧困、DV、虐待、金銭問題などどちらかというと現実的問題で来談したケースが多いように思います。このようなケースに対して、たとえば精神分析のように内省を促していくような心理療法は全く不適応だと思いますし、そういう時にはSFAのようなやり方で、個人に目を向けるのではなく、現実問題をどのように対処して行けば良いのかを考えることの方が重要だと思います。そのあたりはSFAが得意とするのだろうと思います。

 さらに、最近(といっても、僕もそんなに昔のことを知っているベテランではないけど)は、問題を外在化し、自分のこととして引き受けない患者が多いように思います。「あの上司が悪いからこうなった」「親が理解してくれない」「友達がこっちを巻き込んでくる」と言ったように、外に問題があり、それさえ無くなればすべて丸く収まる、と考えて来談する人が多いのです。こういう時に内省を求めるような心理療法はあまり効果がありません。そんな時にはSFAのやり方は有効かもしれません。

 僕は基本的に精神分析をオリエンテーションとしていますが、なかなか精神分析的な設定に乗れる患者さんはいません。20人いたら1人いるかいないかでしょう。そういう時、一人の人に対しては精神分析的な設定を構造化しますが、残りの19人はSFAほどしっかりしたものではないのですが、ブリーフセラピー的な心理療法で対応しています。あとはCBT的なことでサポートしたり。いうなれば、僕の仕事のうち、精神分析の占める割合は5%以下です(笑)

 また話が脱線しましたが、本書ではSFAをシステマティックに学べるような配慮が施されており、ビデオテープなどの視覚教材を用いて本書を読むと理解がさらに進むようです。また、最後の付録では、面接の中で使う質問項目などがマニュアル的に一覧としてまとめてあり、それを参考にすることも可能なようです。とりあえず暗記なのでしょうか。もちろん、臨床は生ものなので、その時その時で臨機応変に対応しないといけないとは思いますが。


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