発展途上臨床さいころじすとの航跡blog版 (精神分析 臨床心理 心理療法)
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 タイトルの「精神科医はなぜ心を病むのか」ということに直接触れているのは第1章と第2章のみで、第3章以降は薬物の効果に対する疑問や、精神科における診断のあやふやさ、精神医療の現状について述べています。

 ずっと精神科医を身近で見てきましたが、確かに変わった方が多いというのは同感です。しかし、この変わった感じがあるからこそ、患者の多種多様な話を理解したり、付き合ったりできるのだろうとも思います。単なる常識人なだけだと勤まらないし、最初からこういう現場には興味は持たないのだろうと思います。また、とても重労働で過労気味・ストレス過多でもあり、かなり大変な仕事であることもまた知っています。医療制度の問題もあるだろうし、精神科医の絶対数の少なさも関係しているのでしょう。こういう中で日々の臨床を営んでおられる精神科医は尊敬しています。

 第3章以降は精神医療の現状などが色々と書かれており、少し貶めすぎのような表現もチラホラありました。特に診断のあやふやさや薬の効果については、他の医学・科学ほどバッチリと分かりやすく、明確に目に見える形で提示できるものがないので、どうしても揺らぎのようなものが入ってくるのは仕方ないのかもしれません。精神医学が進歩すれば明確になっていくのかもしれませんが、人の心という本来的に持っている揺らぎがあるので、これはこれで付き合っていかないといけないのだろうとも思います。この曖昧さに耐えれることが精神医療に従事することの一つの資格なのだろうと考えます。

 また、本書は一般の方や患者向けに書かれているからか、明快さを念頭にしているように思います。その為、分かりやすくなっている反面、本当は複雑で、諸説あるものを切り落としているので、学問的にはいささか間違いになるようなことまで書かれていたりしました。さらに憶測や推測で書かれているところも多かったです。他にも「これは違うだろう~」というところも散見されました。例えば「フロイトは精神医学の父」ではないとか。

 色々と問題点もありますが、本書では精神科医や精神医療、薬物を完全否定しているのではなく、その中で大変ながらもやっていかねばならないというニュアンスは含まれているので、その辺は助けとなるでしょう。



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 クライン理論を平易に紹介している書籍で、精神分析をそれほど学んでいない人でも理解できるぐらいのレベルで書かれています。ただ、その分、なんというか従来のクライン派の書籍から受ける大きなインパクトというか、引きこまれる凄さというか、ビリビリとくる臨場感があまり感じられず、本当にテキストといった感じ。

 また第1章はクラインの人生について系統的に書かれています。クラインの人生は本当に喪失の連続だったようで、重度のうつ病といっても良いぐらいだったんだろうと思います。理論はとても厳しいものだけど、その背景にある種のクラインの悲しみを感じてしまうのは僕だけでしょうか。ただ、この第1章は37ページぐらいのコンパクトなものであり、もう少し深く色々と知りたいという気持ちにもなります。

 そして、本書の一番の特徴が第4章の「批判と反論」だと思います。クライン理論や精神分析理論に対してさまざまな視点からこれまでたくさんの批判・非難がなされてきました。的を得た批判もあれば、感情的な非難もありますが、それに対してクライン理論の観点からキチンと反論をしていき、その簡潔で分かりやすい反論はとても勉強になります。精神分析は対話の学問であると思います。それはフロイトの論文を見ても、批判との対話によって論を進めているところもありますし、精神分析臨床自体が分析家と患者の対話によってなりたっています。なので、この章の問答はきわめて精神分析的であると言えます。この第4章だけでも読む価値ありです。


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