発展途上臨床さいころじすとの航跡blog版 (精神分析 臨床心理 心理療法)
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 ウィニコットについて様々な観点から論じられている包括的な書。ウィニコットの人生から、主要論文の要約、基礎理論、臨床理論、他分析家との関連性など幅広くウィニコットを理解するのにはとても最適である。

 ウィニコットは人柄・センス・技術のどれをとっても歴代の分析家の中でもNo.1と言えるほど、とても優れた人であったようである。さらに理論的にも素晴らしく、ウィニコットなしでは現代の精神分析は語れないほどである。どこがそこまですごかったのかは語りつくせないので本書を直にあたってもらえたらと思う。

 本書によるとウィニコットはとても暖かく、人間性溢れた人だったとともに、患者さんとの心理的・物理的距離がとても近い人だったようである。「解釈は分析家の限界を患者さんに教える」という言葉があり、この言葉だけ見ると、分析家と患者さんとのバウンダリーをしっかりととっているような感じもするが、それも距離の近さがあるゆえにバウンダリーを認識するようになったと言うこともできる。

 本書からだけであるがウィニコットの臨床感覚を見ると、患者さんの中にスッと入っていくことが本当に自然と出来ていたのだろうなと想像できる。これは僕自身の臨床感覚と正反対のように思えてくる。僕自身は多分、患者さんととても距離を取る治療者であると思っている。それは自分の中に患者さんに侵入されることに抵抗があるとともに、僕自身が患者さんの中に今一歩入り込めないところがある(技術的にも心理的にも)。

 ウィニコットの臨床事例を見ると自然に物理的接触をとっていたようであるが、僕は多分、このような物理的接触はかなり抵抗を呼び起こしてしまう。それが何に由来するのかはウィニコットの生育歴と僕の生育歴の違いが大きいとは思うが、これ以上はあまりにも自己開示的になってしまうので、止めておこうと思う。

 とにもかくにも、読めば読むほどウィニコットの臨床感覚と僕のそれとの違いがとても大きいがゆえに、目が開かれる感じもあるし、参考になるところもあるし、自分にはできないな~とガックシくるところもある。

 今後、ウィニコットの著作を直接読んでいくことになると思うが、どのようにウィニコットと付き合っていくのかをまた考えていきたい。


S.フロイトの1909年に発表された論文「ある五歳男児の恐怖症分析」について。

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 フロイトの5つの症例研究の論文のうちのひとつ。症例は馬恐怖症を呈するハンス少年であるが、フロイトが直接分析を行ったのではなく、ハンス少年の父親が分析を行い、フロイトは父親のコンサルテーション・スーパーヴィジョンをしていた症例である。ちなみにフロイトはハンス少年には1度ほどしか会ってはいない。

 この時代には親が自分の子どもに精神分析を行うことが当然のように行われていたようである。フロイトは娘のアナ=フロイトを数ヶ月とはいえ分析していたし、メラニー=クラインも自分の子どもの分析を行い、それを元に論文を書いたりしている。

 現在の日本では家族だけではなく、日常生活で接点のある人のセラピーや分析は行わないという方向で動いている。いつからそうなったのかは分からないが、故河合隼雄はどこかの論文か本で、身近な人のセラピーでは治療者が一定の距離をとることが大変難しい、と書いており、それが影響しているのではないかと思ったりもする。違うかもしれないが。

 上記の理由のほかに、精神分析の場合にはファンタジーを取り扱うので、治療者と患者が家族であった場合、分析の中で出てきた素材が現実の関係のものなのか、転移というファンタジーなのかが判別できないところが理由として挙げられるかもしれない。

 この論文が書かれたのは1909年で転移の概念はすでに精神分析の中では出てきている。しかし、この時期の転移の概念は治療上邪魔になる抵抗という位置づけが大きく、「転移の力動性について」(1912)で捉えなおされるように治療の手がかりであるという理解はまだなかったと思われる。

 この転移概念の転換後にこの症例を振り返ると、ハンス少年が言語化していっていたファンタジーは父親との分析からの素材であり、そこに親子関係なのか治療関係なのか判別しがたい関係性からのものであると理解できる。そして、そこから馬=父親という定式化がこの論文ではなされているが、これが母親との分析であったならば何かが変わっていたのではないかと空想してみたりもできる。

 それと、話は変わるが、去勢不安が症状化の一因と論文では書かれているが、この去勢不安は「ペニスを切り取られる」という恐ろしいものであり、神経症水準の不安というよりは、迫害不安に近いもののように僕には思えてくる。だからといって何なんだというものではないが。


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