発展途上臨床さいころじすとの航跡blog版 (精神分析 臨床心理 心理療法)
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 何をもって失敗というのかは別として、心理臨床をやってて、「今まで俺は失敗したことが無い」という人は居ないと思います。多かれ少なかれ、失敗と思うようなことに直面してきたと思います。もちろん、専門家としてできるだけ失敗しないように準備をし、最善の注意を払っていくことは大切です。反面、失敗したときに変に言い訳をしたり、否認したりするのではなく、本書のタイトルどおり「失敗から学ぶ」という姿勢が真摯な態度といえるでしょう。

 そして、失敗したからすべてダメというのではなく、失敗から何を学び、次のケースに生かしていくことを考えると良いでしょう。そして、過剰に失敗を卑下したり、不安に思ったりするのではなく、スーパーヴァイザーや職場の上司などと相談しながら、これまでの失敗を取り戻す気持ちで心理臨床をしていくことが大切になってきます。

 失敗をしたからといって、ケースを持たないようにしたり、持たせないようにしたりすると、そこからその心理臨床家の成長はストップしてしまいます。失敗を乗り越え、挽回していく気持ちとチャンスが必須になってくるでしょう。

 さらに、中断などの大きな失敗だけではなく、臨床を行っていると、細々とした治療者のミスやドジはたまにあります。そうしたことがすべてダメかというとそうではなく、ミスやドジをすることでそこに治療者-患者さんとの間でリアルで生き生きとした情緒交流が生まれます。言い換えると、治療者の人間らしさ・人間臭さが現れます。それがターニングポイントとなり、治療が展開することもあるでしょう。

 ウィニコットはほど良い母親good enough motherの概念を提唱しました。それは完全な養育をかならずしなければ行けない、そうしなければ養育は失敗するという意味ではないようです。

 もちろんそれは初めから失敗することを念頭に置いたり、わざと失敗しようということではないです。治療者は失敗しないように、ルールに外れないように、細心の注意を払いつつ、全力をつくしていくことが前提です。そうした態度を維持していく中での失敗には意味があります。

 しかし、本書の執筆者の中に以前のスーパーヴァイザーの先生がいるのですが、その先生がこういうことをしてたのか~と思うと、少しホッとする気持ちもあります。僕の目から見るとすごい臨床能力を持っているように見える先生だけに昔はこんなにギクシャクとした臨床をしていたんだなって思うと、なんだかさらに親しみが湧いてきました。


■目次

失敗とは何か
  丹治 光浩
見える失敗、見えない失敗
  酒木  保
失敗を活かす
  星野 良一
小さな失敗、大きな失敗
  松下恵美子
失敗と成功を左右するもの
  川瀬 正裕
治療の深さ(レベル)と失敗
  浦田 英範
治療期間と失敗
  坂入 洋右
失敗の原因と責任について
  塩崎 尚美
失敗と倫理をめぐって―その一―
  三和 啓二
失敗と倫理をめぐって―その二―
  三和 啓二
ターミナルケアにおいて、病状告知後、精神的変調をきたした事例
  浅海 敬子
いつまでもゴールが見つけられない―「何も困っていない」と言う小学生の不登校・頻尿の事例
  牛田 洋一
偽解決の偽解決―「誰からもかわいがられていない」と訴え不登校になった少女の母親との面接
  牛田 洋一
治療が進まないことに治療者が焦り、追いつめてしまった事例
  大野木 泉
普通科高校に入学した発達障害の事例
  大野木 泉
家族の問題を視野に入れなかったことの失敗
  岡田 文子
わずかなサインに注目することの難しさ
  岡田 文子
技法の変更と「逃げ」
  岡田 光夫
クライエントのアンビバレントな感情を抱えることの失敗
  岡田 光夫
強迫酔o症のクライエントに対する配慮に欠けた失敗事例
  川瀬 正裕
発達障害児の親自身を見つめることの重要性を教えられた事例
  川瀬 正裕
著名人から依頼された事例の失敗
  酒木  保
治療関係の泥沼化
  酒木  保
母親面接において、カウンセラーの内なる子どもが活性化し、母親の苦しみを理解できなかった例
  塩崎 尚美
教員からの期待を安易に引き受けて親と会い、カウンセラーとしての役割を見失ってしまった例
  塩崎 尚美
父親からの突然の電話で面接が終了した不登校の事例
  丹治 光浩
不必要に長期の関わりをもったと考えられる腰痛症の事例
  丹治 光浩
いじめの基底にあった「いのち」の問題にカウンセラーが心及ばず中断に至ったケース
  鶴田 一郎
自閉症の娘の「障害」を受け入れることができず中断に至った母親面接の事例
  鶴田 一郎
クライエントの実存的不安に逆転移を起こした事例
  寺沢英理子
クライエントの急死をめぐる喪の作業
  寺沢英理子
中学校におけるスクールカウンセラーの失敗事例
  野田 正人
心理検査をめぐる失敗(1)―検査拒否
  船越 昭宏
心理検査をめぐる失敗(2)―解釈の失敗
  船越 昭宏
心理検査をめぐる失敗(3)―診断と所見の不一致
  星野 良一
治療が順調に進展しているときの落とし穴
  星野 良一
卒業とともに治療関係が中断した拒食症の事例
  松下恵美子
家族療法への紹介という形で距離をおいた家庭内暴力の事例
  松下恵美子
治療者の前でも「いい子」を演じたクライエントと、母親のペースで進んだ面接
  松本真理子
「僕をわかってくれなかった」と言って前治療者のもとに戻っていった青年期男性の事例
  水越 三佳
集団不適応、被害念慮、抜毛と多彩な症状を示す女児の事例
  水越 三佳
虐待を受けていた女子高校生の面接中断事例
  三和 啓二
再飲酒を繰り返したアルコール依存症の事例
  三和 啓二




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